2014 Fiscal Year Research-status Report
映像メディアに基づく子どもに関する表象―発達の解釈への影響と社会文化歴史的変遷
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26380902
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Research Institution | Kokugakuin University |
Principal Investigator |
斉藤 こずゑ 國學院大學, 文学部, 教授 (70146736)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 映像発達研究法 / 子どもの表象 / 映像メディア / 社会文化歴史的変遷 / 映像ナラティブ / 映像研究倫理 |
Outline of Annual Research Achievements |
H26年は、日本の映像による子どもの表象について、歴史的な出生率の変動を考慮した3世代に基づく3期の分析を完了し、その上で、視聴者の表象構成と表象実践のインタビュー調査を行う予定だったが、調査の方は達成できなかった。しかし分析結果は学会発表を行うことができた(映像メディアによる発達表象と時代効果 :公放送映像メディアの分析2015年3月、日本発達心理学会第26回大会)。 また、海外資料収集と分析は米国中心に行い、米国発達心理学会が発達方法論に関する会議を開催したので予定通り9月に参加し、量的および質的技法としてのインタビュー法や映像研究に関する情報収集を行い、映像文化人類学センターのある米国南カリフォルニア大学に資料閲覧に赴くことができた。本研究で相対化するための映像実践の興味深い歴史もあり、資料も参照できる米国文化人類学会の映像文化人類学の会議に参加し実践と理論両面から学ぶことができた。 米国の映像資料収集について子どもの表象の構成を、日本の映像の場合と同じように行うため、資料の収集が進んだ。映像ジャンルは共通で、歴史上の出生人口動態に基づくベビーブームの2世代期間の映像から抽出する目的で、写真を含む映像資料を収集した。 また現在翻訳中の書籍(Alderson,P. & Morrow,V. 2011 )や欧米の倫理規定も参照しつつ、本研究では、視聴者の適正な発達表象構成に寄与するために、子どもの映像化資料について過度に閉鎖的な倫理観に代わる方法を提案することも目的とする。本来H28年度の目的に挙げていたが、H26年度にもその成果を得ることができた(子どものフィールド参与観察における倫理 2014年10月 質的心理学フォーラム第6号 、子どもの権利と研究倫理~発達心理学の活躍の場 2015年2月、日本発達心理学会ニューズレター 第74号)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
H26年度の研究達成の遅れは、研究補助の人材確保が十分でなかったことに起因する。二名の補助者を依頼していたが、就職やほかの事情で十分な補助を達成できなかった。しかし未だに未達成な部分についても手順はすでにできているので今年度はより確実な補助を依頼しピッチを上げたい。 また、H26年8月に研究の分析を行っていた古いパソコンが壊れたこと、そのデータ回復にひと月ほどかかったことなども遅延の原因の一つである。パソコンの購入はH26年の予算に計上してあったが、本研究遂行に適切な機種がなかったため、今後購入する予定である。 以上の理由による遅延以外には、日本の映像による子どもの表象について、歴史的な出生率の変動を考慮した3世代に基づく3期の分析を完了したうえで、資料収集、倫理的検討などは予想以上に進み、H27年の研究の土台としては十分な段階に至っている。
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Strategy for Future Research Activity |
H27年は日本の3世代の表象構成、表象実践について映像と非映像要因の影響の吟味の検討を文献とインタビューによって行い、映像の効果を明確にする。また英国王立人類学研究所の15回民族誌フィルム祭(6月)に合わせ英国の映像資料収集分析のために赴く。山形国際ドキュメンタリー映画祭(10月)においても映像資料収集他、情報収集を行う。 用いる映像メディアは前年度にやり残したものを同様なやり方で補足する。NHKで放送されたアーカイブスコンテンツから、日常的に視聴頻度が高く、子どもの映像があることを前提に、3種の映像ジャンルを選び、各ジャンルについて、3世代期間ごとに0-12歳の期間の各年につき映像資料を選ぶ。3種のジャンルは、①ニュース、②育児・教育番組、③ドキュメンタリー番組である。 H26年度に達成できなかったものはNHKアーカイブスで閲覧可能媒体になっていない欠損映像もあるので、日映アーカイブスや、映像資料館などで古い映像を探し、賃貸または複写購入する。 英国の映像資料収集は子どもの表象の構成を、日本の映像の場合と同じように行う。映像ジャンルは共通で、歴史上の出生人口動態に基づくベビーブームの2世代期間の映像から抽出する。英国王立人類学研究所主催の民族誌映画祭にて資料収集するほか、許可を得て研究所図書館で資料収集する。また米国文化人類学会(11月18-22日 Denver)でも、映像文化人類学の特別セッションで映像利用の研究について資料と情報を得る。 本研究の研究目標である、映像資料を発信する映像発達研究法の構築には、その重要な要件に研究上及び日常における映像利用のガイドラインについて考察することも含んでいる。そこでH27年度も映像利用の倫理についての検討を研究活動の中で積極的に行い、研究成果の一つとする。
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Causes of Carryover |
H27年度に繰り越した使用額は515,273円であるが、この研究費を残した理由は上記自己点検評価で述べたとおり、研究補助の人材確保が十分でなかったこと、および新規パソコン購入が未達成であったことに起因する。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H27年度使用額は、次年度使用額、および平成27年度請求額(直接経費)の合計1515,273円である、そこでその計画も含めたH27年度の研究費使用計画を以下にまとめる。 1、物品費:(1)図書映像資料として、子どもの図像関連図書、映像分析関連図書、子どもの歴史関連図書、子どもの写真集、子どもの既成映画DVD、映像圧縮編集保存委託費。(2)映像関連機器として、映像分析用パソコン、映像編集機器、ビデオ関連消耗品、プリンター関係消耗品、パソコン関連消耗品。(1)(2)合計概算550,000円 2、旅費:海外学資料情報収集に関わる交通費(2往復)、宿泊費、資料収集費。国内学会および資料収集に関わる交通費、宿泊費、資料収集費。概算600,000円 3、人件費・謝金として、国内調査補助、資料整理、映像分析補助、専門的知識の提供。概算300,000円 4、その他として、交通費、資料複写費、映像関連施設図書館年会。概算50,000円
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Research Products
(3 results)