2015 Fiscal Year Research-status Report
映像メディアに基づく子どもに関する表象―発達の解釈への影響と社会文化歴史的変遷
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26380902
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Research Institution | Kokugakuin University |
Principal Investigator |
斉藤 こずゑ 國學院大學, 文学部, 教授 (70146736)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 映像発達研究法 / 子どもの表象 / 映像メディア / 社会文化歴史的変遷 / 映像ナラティブ / 映像研究倫理 |
Outline of Annual Research Achievements |
H27年は、本課題研究で検討を行っている、出生数に基づく日本の3世代(第一次ベビーブーム世代(1947-1949出生)の団塊世代を親とする団塊ジュニア世代とその子の世代が0-12歳の期間(1971-1986)と(2000-2018→2013))における、子どもや発達、教育の表象構成、表象実践について映像と非映像要因の影響の検討を、文献とインタヴューによって行い、映像の効果を明確にしようとした。英国王立研究所15回民族誌フィルム祭(6月)と、山形国際ドキュメンタリー映画祭(10月)に赴き、映像資料収集、情報収集を行った。分析対象の映像を吟味しエンバーゴ様に時差をもって販売されるコンテンツを収集分析継続中である。 さらに本課題研究のもう一つの研究目標である、研究及び日常における映像利用のガイドラインについて、理論的及び具体的な考察を進め、映像利用の倫理的、道具的妥当性について分析結果を学会報告した。倫理的妥当性の検討では、映像化された対象(子ども)が危害を加えられず、全情報開示を受け、自己決定、匿名性、秘密の保護の権利を尊重されることに関してどのような配慮がなされているかを検討した。その結果、日常や現実からの正否偏向の問題、偏向検証過程の検討とその重要性。子どもの表象形成への映像の妥当な寄与の検証の必要性が明確になった。また道具的妥当性の検討では、子どもの表現に映像メディアが利用される必然性、他のメディア(描画、言語的説明、ミニチュアなど)との代替可能性の有無や意味付けの差異を検討した。その結果、子どもの表象形成に寄与するメディアの道具的妥当性については、不可逆的な技術革新信仰と表現媒体の代替可能性の意味に関するメタ理論が必要であることが分かった。これらの結果は上記3世代の時代の推移とともに問題の質・量が変化していた。H28年度もこの点をさらに深く検討していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H27年度の研究達成状況は全体として順調だが、当初の計画に照らすと達成度の高かった点と低い点が混在する。 H27年度にアーカイブス学術利用の公募がなかったこと及び東京のNHK放送博物館改築のためNHKアーカイブスの利用ができず、3世代各時期のテレビ放送コンテンツの具体的な分析が滞った。しかし再開したNHKアーカイブス学術利用に応募しH27年3月より再度コンテンツ閲覧権を得たのでその準備としてH27年度までに得たコンテンツリストなどメタデータの整理と分析方針を本課題研究の目的に合うよう再構築した。この分析はH28年度の研究内容として実践していく。 達成度の高かったのは、映像利用の倫理的基準について、各時期の倫理的妥当性の分析を行う枠組みを、文献研究及び海外フィルム祭参加の情報収集によって構築したことなどである。
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Strategy for Future Research Activity |
H28年度は、最終年度のため各種収集、分析資料を統合し、映像発達研究法構築の理論化を行う。海外資料との相対化により日本の映像による子ども表象構成の特色を明確にする。非アジア、非欧米の資料としてグアテマラの子どもの発達観について長期縦断研究を行った米国の発達文化人類学者Barbara Rogoffの著作や映像資料を利用する。当初予定していた実際にグアテマラに赴く計画は、費用面と現地支援者の都合を考慮しH28年度実施は見送る。その代わり、英国王立人類学研究所16回民族誌フィルム祭(3月)に参加し新たな映像資料の動向を把握し、今年の研究のまとめと次期研究計画に役立てる。またNHKアーカイブスの学術利用許可が下りたため、コンテンツの分析をさらに進める。 また、本申請研究の研究目標である、映像資料を発信する映像発達研究法の構築には、その重要な要件に研究上及び日常における映像利用のガイドラインについて考察することも含んでいる。そこでフィールド観察映像を用いた映像制作を行い、映像発達研究法の実践的例示とする。また現在翻訳中の(Alderson,P. & Morrow,V. 2011)の訳書を出版し一般に紹介する。さらに他の欧米の倫理規定や研究倫理、映像倫理に関する著作も参照しつつ、子どもの映像化資料について、視聴者の適正な発達表象構成に寄与するために、倫理遵守を目標とした過度に遮蔽された人物映像に代わる方法を提案する。
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Causes of Carryover |
H28年度に繰り越した使用額は369,665円である。この研究費を残した理由は、適切な研究補助人材の確保が出来なかったこと、適切な映像編集ソフト、機器の販売がなく購入を控えたことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H28年使用額は次年度使用額369,665円と、平成28年度請求額(直接経費)800,000円の合計1,169,665円である。そこで新たに平成28年度使用計画を以下のようにする。 1、物品費:(1)図書映像資料として、子どもの図像関連図書、映像分析関連図書、子どもの歴史関連図書、子どもの規制映画DVD、映像圧縮編集保存委託費。(2)映像関連機器として、映像分析用パソコン、映像編集機器、ビデオ関連消耗品、プリンター関連消耗品、パソコン関連消耗品。(1)(2)合計概算500,000円。2、旅費:英国王立民族誌フィルム祭参加、資料情報収集にかかわる費用及び交通費(1往復)、宿泊費。国内学会参加、資料収集、交通宿泊費。合計概算350,000円。3、人件費・謝金として、資料整理、映像分析補助、専門的知識情報提供謝金。合計概算250,000円。4、その他として、資料複写費、映像関連資料図書館・施設利用費。合計概算69.000円。
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Research Products
(1 results)