2014 Fiscal Year Research-status Report
心理学研究におけるベイズ統計学の普及に関する教授法に関する研究
Project/Area Number |
26380906
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
豊田 秀樹 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (60217578)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ベイズ統計学 / STAN / 非対称正規分布の表現 / 項目特性図 / 多面評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は主としてベイズ統計学を利用し、4つの仕事をした。1つは、「3次までの積率を独立に特定できる非対称正規分布の表現」である。統計解析では正規分布が多用される。それは1次と2次のモーメントが陽な形式で独立に指定できるという性質が大きく寄与している。本研究ではその性質を3次までに拡張した非対称正規分布の表現を提案した。実証的には、ブランド価値の分布の歪みの分析を行った。2つ目は「項目特性図における情報量規準を用いた群数の選択法」である。より良いテストを運用し続ける際に、必要なことは、項目分析が必要不可欠であり、そのためには項目特性図が効果を発揮する。しかし従来の項目特性図は、その群数を根拠なく決めなければならないという欠点があった。本研究では、情報量規準を用いて項目特性図に関する群数を自動的に決める方法に関して提案した。「3つ目は多面評価における信頼性係数と妥当性係数の導出 ―評価者の違いを考慮した項目数決定のために―」である。人事評価における多面的評価において、上司の人数は信頼性係数と妥当性係数に大きな影響を与える。本研究では、それらを合理的に扱う方法を提案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「おおむね順調に進展している理由」を挙げるならば、研究実施者がベイズ統計学に関する本研究に、重大な社会的意義を感じているからである。2014年現在、統計学における著名な学術雑誌バイオメトリカ(Biometrika)の過半数の論文が、ベイズ統計学を利用している。多くの著名な学術雑誌も同様の傾向である。スパムメイルをゴミ箱に捨て、日々、私たちの勉強・仕事を助けてくれるのは、ベイズ統計学を利用したメールフィルタである。ベイズ的画像処理によってデジタルリマスターされ、劇的に美しくよみがえった名作映画を私たちは日常的に楽しめる。ベイズ理論が様々な分野で爆発的に活用されており、ベイズ統計学なしには、もうデータ分析は語れない。21世紀はベイズ統計学の時代である。データ分析をしようとする人、統計学の勉強を始める人は分野を問わず、すべからくベイズ統計学を学ばなければならない時代になった、この使命感がおおむね順調に進展している理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究推進方策は2つある。1つはハミルトニアン・モンテカルロ法(Hamiltonian monte carlo method, HMC法)を利用したベイズ統計学の入門的教材を作ることである。 時代にふさわしい入門的教材を数学Ⅰ,Ⅱ,A,Bの範囲を予備知識として作成したい。2つ目は、即応した、紙を使わないWEBベースのアンケート調査法の解説書である。これまでアンケート調査(質問紙調査)で卒業論文を書こうとすると、(1)調査票を印刷し、(2)調査票を配布し、(3)調査票を回収し、(4)データを入力し、(5)調査票を注意深く保管・廃棄する必要があった。しかしWeb上でアンケート調査を実施すると、これらの労力は大幅に省略または軽減でき、調査の本質的・知的作業に時間や労力を集中でる。(1)紙媒体の調査票を印刷する必要がない。アンケート実施のギリギリまで調査票を推敲できる。(2)調査票を配布する必要がない。Eメイル等でURLを通知し、回答を依頼できる。(3)調査票を回収する必要がない。遠方・海外に住んでいる人にも回答してもらえる。(4)調査票を見て、pcへデータを入力する必要がない。楽だし、転記ミスがなくなる。(5)紙媒体の調査票を保管・廃棄する必要もない。以上のことを鑑み、早急にWEBベースのアンケート調査に移行することを可能にする教材を提案したい。
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