2015 Fiscal Year Research-status Report
発達障害様の記憶障害を呈す成人への認知実験的アプローチの方法論の構築
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26380908
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Research Institution | Tokyo Ariake University of Medical and Health Sciences |
Principal Investigator |
山下 雅子 東京有明医療大学, 看護学部, 准教授 (20563513)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
羽生 和紀 日本大学, 文理学部, 教授 (00307787)
丹藤 克也 愛知淑徳大学, 心理学部, 准教授 (30455612)
五十嵐 一枝 白百合女子大学, 文学部, 教授 (00338568)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 認知障害傾向 / 発達障害 / 記憶 / 成人 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は発達障害様の認知・記憶障害を訴える成人について現場の心理士が想定する特徴と、実験心理学的研究の理論を整合させ、認知処理の個人差のデータをもって発達障害に関連する情報処理メカニズム解明に貢献することを目的とする。前補助金研究(平成22~24年度基盤研究C(番号22530725))から得られた知見を基にして、個々人の行動傾向データと、認知課題を用いた実験によって得られる合目的的でない想起等のコントロール不全の状態のデータを分析し、状態像を認知情報処理の視点から説明することを試みる。後述するように、前補助金では健常一般ボランティアの中に健常からの逸脱傾向のある協力者が見られた。そこで本研究では、前補助金研究によって有効性が示された方法論を維持しつつ、さらに研究手続きの修正をしながら研究を進める。今年度はアナログ研究を用いた予備調査を行った。発達障害は、健常との連続性が積極的に示されている自閉症スペクトラム(以下、ASD)からそうではない学習障害まで、さまざまである。本研究での発達障害様の認知・記憶障害は、注意欠如多動性障害(以下、ADHD)を潜在的に想定してADHDはASDほどは連続性の研究が進んでいない。一般的にアナログ研究では,対象者は障害の診断が下りていないので診断されている群との比較より差、あるいは分散が小さく結果が出にくいと言われている。本研究でもこの問題は発生したが,前補助金研究のときのような事態、つまり発達障害研究の健常ボランティアは発達障害に興味がある協力者がおり、その協力者が潜在的に発達障害傾向があるといった群分けの問題を解決するひとつの手続きである。利するところが大きいと判断し、本調査までは今年度の手続きを維持する予定である。健常の上位群を障害群に含めるか、あるいは3番目の群を設定するかなど、の基礎となるデータが得られたことが今年度の成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
青年期後期を対象としたアナログ研究において、課題の絞り込みが一部遅れている。 いくつかの修正・改良点が必要となった。いくつかあるが、たとえば、今年度の課題で検索誘導性忘却と不注意傾向および短期記憶容量(数唱課題得点)との関連性は認められなかったが、いくつかの改善点が考えられた。1つ目は、数唱課題の回答方法を前補助金研究での口頭から筆記式に変えたことである。筆記式だと、参加者自身の声が音韻ループ保持の阻害要因にならず、かつ紙面上にすでにある数字を使用するといった、工夫,記銘方略使用の能力など口頭での回答とは違った個人差が表れている可能性がある。これは、計画時には分からなかったことであり、手続きが見直される必要がある。また、今回記銘20分後の普通の記憶課題の再生率が低い数名をデータ分析対象外とせざるを得なかったのは計算上、再生率が低いとその床効果のために理論上の抑制値が測れなくなるためであるが、この数名の不注意得点はそれぞれ、不注意得点が低いとは言いがたい点数であった。20分間はしかし健常な大学生では再生を行うための妥当な遅延時間である。その20分で忘却が進むというこの協力者は研究の進行にむしを有効なデータを算出する可能性を持つ協力者かもしれない。この手続きでも再生までの時間のコントルールが必要かもしれないが、計画時には研究者の知りえないことであり、この課題にも改良を要する。
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Strategy for Future Research Activity |
予備調査は再度行う必要がある。 「11.現在までの進捗状況」に示したような、筆記回答式の数唱課題に、個人の工夫などの大きな剰余変数ができるだけ入ってこないようにし、また、聴覚提示された刺激を視覚で回答する手続きについて、できるだけ口頭での回答(自分の声は聴覚的に聞こえうる)に近くなるような手続きを、不注意に関する先行研究から探し出し、調査を行ってみることが必要である。また、記憶課題の中で、再生までの遅延時間について、今度は天井効果も床効果も現れないような遅延時間を見つけ出すことが期待される。ただし、前補助金研究では、障害を持つ壮・中年でも20分の遅延時間で普通の再生が可能であるので、この予備調査で遅延時間をたとえば5分に変更し短くした場合、壮・中年では天井効果が観られてしまうかもしれないため、これを回避する手続きの公安が必要である。 また自己報告式で不注意得点を算出しているが、これを左右する別の個人差として、常的な「不注意」を不注意と捉えられるメタ認知能力があるが、さらに、学生という立場がある。社会人や家庭人と異なり、周囲からの不注意の指摘経験が豊富にあるかどうかは判断が難しい。学生であると、教員やその周囲が不注意を知らせても、仕組みとして立場が守られるため、本人が強く望む学業成績に達さないなどの明確な不利益かないと不注意が強く自覚されない可能性がある。課題の追加とそれによる効力時間の増加について考えられなければならない。
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Causes of Carryover |
青年期後期を対象としたアナログ研究において、予測不能な要因が入り、その統制に有効な手続きや課題の絞り込みが遅れているため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
15年度使用予定の金額が16年度に移行したので、計画の順番に自体には大きな変更はなく、以下の項目に使用予定である。 予備の追調査の謝金 20万程度/業者への被験者依頼委託 90万程度/学会(国内、国外)参加費、旅費 50万程度/その他、消耗品など。
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Research Products
(3 results)