2014 Fiscal Year Research-status Report
自己制御に係る2つの気質と対人場面での「自己」の制御:就学前期の縦断研究
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26380909
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
水野 里恵 中京大学, 心理学部, 教授 (10321019)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 気質 / 行動的抑制傾向 / エフォートフル・コントロール / 対人的自己制御行動 / 養育環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
4歳齢の子どもとその養育者を対象にし,以下の2つの調査を実施した。 (1)質問紙調査によって,以下の情報を収集した。1.子どもの気質(行動的抑制傾向・エフォートフル・コントロール)測定, 2.子どもの対人場面での自己制御行動, 3.子どもの遊び(玩具の選択を含む)を中心に、養育者がどのような教育的な働きかけを行っているかを含む養育環境, 4.母親の分離不安・育児ストレスの測定,である。 今回の質問紙データを含めた4回の質問紙データの縦断分析の結果,集団としての気質の安定性は,行動的抑制傾向・エフォートフル・コントロールともに観察されたが,2つの気質を比較すると,行動的抑制傾向の方が高い安定性を示していた。また,個人差の検討という観点からは,安定を示す群(高得点安定・中得点安定・低得点安定),変動が顕著な群(上昇群・下降群・曲線変動)など多様な個人差が観察された。それらを規定する要因に関しては,養育環境データとの関連から現在分析中である。また,気質が養育者に与える影響についても分析を進めている。 (2)17名の子ども(男児: 4名,女児 13名)を対象に実験的行動観察調査を実施した。行動的抑制傾向は3つの場面によって測定した。<場面1:自由遊び><場面2:ストレンジャー><場面3:初めて見る玩具>である。エフォートフル・コントロールは以下の5つの場面で測定した<場面1:順番遊び><場面2:運動遊び><場面3:満足遅延A><場面4:お絵かき><場面5:満足遅延B>である。 これら4歳齢のデータを3歳齢のデータと比較したところ,エフォートフル・コントロールについては,課題の達成度と同時に,どのような抑制方略を使用するかについて顕著な発達的違いが観察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
質問紙調査・実験的観察調査ともに,当初計画通り順調にデータ収集は進めているが,研究協力者が減少していくという縦断研究にありがちな問題が生じてきている。また,子どもが保育園・幼稚園に通い出し,養育者も第二子誕生や職場復帰といった時期になったこともあり,時間の都合をつけて実験的観察調査に参加してもらうことが難しくなってきている。
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Strategy for Future Research Activity |
5歳齢の子どもとその養育者を対象にした調査を実施する予定である。 (1)質問紙調査により,以下の3つの情報を収集する。①子どもの気質質問紙測定はThe Children’s Behavior Questionnaire (Rothbart, 1981)翻訳版より、Attenti on Focusing, Attention Shifting, Fear, Frustration, Inhibitory Control, Perceptual Sensitivity, Shyn essの7次元を使用する。②子どもの養育環境について尋ねる。③子どもの対人場面での自己制御行動に関して尋ねる。 (2)研究協力者を対象に,子どもの行動観察調査と親に対する面接調査を実施する。①実験室での子どもの気質測定は、研究代表者が開発した下記のテストバッテリーを使用する。(a)行動的抑制傾向 (1)自由遊び課題:新奇な場所への抑制を測定、(2)挨拶・初めての人との遊び課題:新奇な人物への抑制 を測定、(3)ピエロ課題:新奇な事物への抑制を測定、(b)エフォートフル・コントロール (1)お弁当作り:行為の抑制と開始、(2)描画課題:運動の速さの抑制、(3)旗振り課題:合図による行為の抑制と開始。②養育者に面接を行い、養育者の認知する子どもの気質を面接調査によって明らかにし、それに対して養育者が その気質的特性をどのように意味づけ評価しているか、何らかの働きかけ(変容への働きかけ・安定性への働き かけ)をしているかを聞き取り調査する。 研究協力者が減少しデータ不足になるリスクを回避するため,縦断研究の参加者より若いコホートに属する子どもを対象に,本研究への参加を求めることを考えている。
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Causes of Carryover |
実験的観察調査の参加者が当初見込みより少なくなった。理由としては,研究参加をしている子どもたちが幼稚園・保育園に通うようになったこと,第二子誕生や職場復帰により母親の時間の都合をつけることが難しくなったことがある。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
データ不足に陥るのを回避するために,縦断研究の参加者より若いコホートに属する子どもを新たにリクルートし,調査を実施する費用に充てる予定である。
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Remarks |
本研究の概要・研究成果について発表すると同時に,一般向けに情報を発信している。
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