2014 Fiscal Year Research-status Report
いじめの連鎖:ピアプレッシャーに敏感な傍観者層はなぜ形成されるのか
Project/Area Number |
26380913
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Research Institution | Hiroshima Shudo University |
Principal Investigator |
西野 泰代 広島修道大学, 人文学部, 教授 (40610530)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | いじめ / 傍観行動 / 仲裁行動 / ピアプレッシャー / 自尊感情 / 道徳不活性 / 共感性 / 学級風土 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はいじめが発生する心理的プロセスについてマイクロ(個人)とマクロ(集団)の両側面から検討をおこない、個人と環境(集団)との相互作用の中でいじめが発生するメカニズムを明らかにすることを目的とするものである。具体的には、いじめを規定する個人の要因が学級集団の中でどのように形成され、それらがどのような状況時にいじめ行動を助長する要因となるのか、またはいじめ被害者を守る行動を促進する要因となるのかについて、学級集団の状態と個人要因との相互作用に注目して検討する。 今年度の調査では、いじめ行動(加害、被害、傍観、仲裁)および個人の特性や学級集団の特徴について質問紙を用いて基礎的データを収集することにより、対象とする集団の状態を把握することを試みた。小学4年生から中学3年生までの6コホートを対象とした。調査時期は11~12月と翌3月であった。 いじめ行動(加害、被害、傍観、仲裁)、個人特性(自尊感情、感情効力感、道徳不活性、共感性、居場所感など)、および環境要因として学級風土、いじめ否定学級規範、教師の自律性支援についてそれぞれ質問紙を用いて調査した。学校段階別に各要因の相関を調べた結果、小学生中学生ともに傍観行動に対してピアプレッシャーと道徳不活性が有意な正の相関、いじめ否定学級規範が有意な負の相関を示した。また、仲裁行動に対して小中学生ともに自尊感情および共感性が有意な正の相関を示した。さらに、小学生のみ、仲裁行動に対してピアプレッシャーといじめ否定学級規範が有意な正の相関を示した。これにより、小学生では学級内にいじめを否定する雰囲気を作り出すことでいじめの仲裁行動を促進させる可能性が示唆された。また、小中学生ともに個人の自尊感情や共感性を高めることでいじめの仲裁行動を促進する可能性が示唆されたとともに集団内での道徳意識の活性化についてあらためて考える必要性も併せて示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画では、初年度第1回目の調査(6月実施予定)で小学4年生から中学3年生まで6コホートの横断データを収集し、第2回目(12月実施予定)から小学4年生と中学1年生の2コホートをその後2年間追跡調査することとしていた。しかしながら、調査協力を依頼していた教育委員会側の事情により、調査対象校の選択や対象校の教職員との交渉が大幅に遅れたため、第1回目調査を11月~12月に実施せざるを得ない状況になった。またそれに伴い、第2回目調査を3月に実施することとなった。このような調査時期の遅れにより、予定していた学会での研究発表が不可能になるなど研究計画遂行上の遅延がやや生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画では、第1回目調査において6コホートの横断データを収集し、2回目以降の調査においては2コホート(小学4年と中学3年)の縦断データを収集する予定であった。しかしながら、今回の調査では学校での一斉回答方式でなく持ち帰りによる個別回答方式をとったため、有効回答率が7割程度となった。そのため、2回目以降の調査においても第1回目と同様に6コホートのデータを収集することとした。 また、第1回目の調査時期が遅れたことにより調査実施期間を半年延長する(当初の計画では平成28年6月までであったが平成28年12月までに延長)こととした。それについては研究協力を依頼した教育委員会からの承諾を得ている。
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Causes of Carryover |
当該年度に交付された別の学内資金(単年度助成)を併用したこと、および国際学会での参加発表を取りやめたこと、以上2点の理由により次年度使用額が生じた。なお、国際学会への参加取りやめについては、第1回調査時期が5か月遅れたために、データ収集終了前に学会発表アブストラクトの提出期限が過ぎてしまったことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初予定していた2コホートの縦断データ収集を6コホートを対象とした縦断データ収集へと変更したことにより、調査用紙の印刷部数および調査用紙回収用個別封筒の枚数が増えるため、収支費目「その他」が増額となる予定である。 また、第2回目と第3回目の調査結果を用いて次年度末(2016/03)にSRA(Society for Research on Adolescence)で研究発表することを考えており、収支費目「旅費」が増える予定である。
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