2014 Fiscal Year Research-status Report
貧困から犯罪に至る過程を媒介・調節する個人要因と支援の在り方
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26380924
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
工藤 晋平 京都大学, グローバル生存学大学院連携ユニット, 特定准教授 (70435064)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
数井 みゆき 茨城大学, 教育学部, 教授 (20282270)
森田 展彰 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (10251068)
北川 恵 甲南大学, 文学部, 教授 (90309360)
JAMES 朋子 京都橘大学, 健康科学部, 准教授 (30449045)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 犯罪・非行 / 生活困窮 / 貧困 / 愛着 / アタッチメント |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は生活に困窮した状況の中で犯罪や非行に至る、あるいはそれを防ぐ個人要因として、「葛藤する能力」と「関係する能力」に注目し、それらが「応答的な他者」の存在によってどのように獲得されていくか、ということを、刑務所、少年院退所者を対象に1年間の追跡調査を行うことで明らかにしようとするものである。2014年度は、研究の初年度として、「葛藤する能力」と「関係する能力」について、先行研究を参考に半構造化面接を行ない、質問項目および、評定項目を策定することが課題であった。 そのために、刑務所を出所して1年以上が経過している男性6名を対象に面接調査を実施し、(1) 事件当時および現在の生活の状況、(2) 1年以上再犯をせずに過ごせているのはなぜか、(3) 何が変化したと思うか、といったことについて尋ねた。どの面接調査の中にも(1) 「葛藤する能力」にかかわる仕事を継続することについての語りが現れ、(2) 「関係する能力」にかかわる人間関係を支えとすることについての語りが現れた。後者については、どの協力者も(3) 事件前と現在とで付き合う人が変わっていることを語っており、「応答的な他者」の出現と「関係する能力」の獲得とが同時に進むことが伺えた。 この予備調査によって、「関係する能力」と「応答的な他者」をどのように区別して取り出すことができるか、が課題であることが明らかになった。また評定項目については継続して検討中である。 「関係する能力」の測定にはAAIと呼ばれる別の半構造化面接も用いるが、この適用、および評定方法についての検討も、研究分担者、および家庭裁判所の調査官等と行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の目標は質問項目および評定項目について決定することであった。このための予備調査対象者を2名としていたが、想定していた以上の調査協力者を得ることができ、草案の面接項目によってどのような語りの内容が現れるかをより明確に知ることができた。また、「関係する能力」と「応答的な他者」を区別して取り出すという新たな課題を発見した。さらに、初年度の課題には含めていなかったAAIの適用についても、家庭裁判所調査官等との検討により、実施上の注意事項、現実の少年調査での適用可能性、犯罪や非行との関連でAAIによって分かることと分からないこと、などを整理することができた。以上が初年度の実施状況についての肯定的な側面である。 他方、評定項目については現在継続して検討中であること、「関係する能力」と「応答的な他者」を区別して取り出すこと新たな課題への対応が求められること、などが否定的な側面である。 以上を考慮して、上記のように自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目の研究計画上の課題は、刑務所・少年院退所後1ヶ月以内の人に、面接を行ない、以降、半年ごとに2回、面接を継続することであった。調査を実施している施設では毎年夏以降から新規入所者が増える傾向にあるため、本格的な調査はそれまで待つことになると予想される。 それまでの間に「関係する能力」と「応答的な能力」を区別する質問項目を策定し、同時に評定項目を策定することが2年目の最初の課題である。前者については現時点で2つの方向性が考えられ、1つは面接項目によって両者を区別することを目指すこと、もう1つは、調査協力者がいずれも事件前と現在とで付き合いを持つ相手を変えていることから、両者は概念的には別であるとしても、実際上は1つとして取り扱うこと、である。どちらが適切な方法であるかを、夏を目処に検討したい。後者については、上記の結果も踏まえながら、継続して検討を進めていきたい。 また、前年度の調査協力者について、1年以上再犯なく過ごしていても、その後に再犯に至る可能性はあるため、その後の情報も得て、面接結果と照らし合わせる作業も行いたい。
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Causes of Carryover |
研究協力者への配分のうち、1名分で物品費について、余剰が発生した。理由としては作業に必要な物品の調達が安価に済んだためであるが、来年度は今年度終わらなかった評定項目および「関係する能力」と「応答的な他者」の識別といった作業を行うため、計画を修正しており、そのための物品費として使用したい。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の通り、余剰分は、今年度追加して行うことになる評定項目の検討、「関係する能力」と「応答的な他者」を区別して取り出すための手続きの工夫に関する検討を行う際の、物品費として使用したい。
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Research Products
(4 results)