2014 Fiscal Year Research-status Report
日本の男子性犯罪受刑者に対する性犯罪防止プログラムの再犯抑止効果
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26380926
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Research Institution | Hyogo University of Teacher Education |
Principal Investigator |
遊間 義一 兵庫教育大学, 学校教育研究科(研究院), 教授 (70406536)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金澤 雄一郎 筑波大学, システム情報工学研究科(系), 教授 (50233854)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 受刑者 / 処遇効果 / 生存分析 / 傾向スコア |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は,平成19年5月以降に全国の刑事施設に強制わいせつにより入所し,同23年12月までに出所した男子受刑者595名の再犯状況を,同24年3月まで追跡したデータに基づき,刑事施設で実施されている性犯罪者処遇プログラム(以下R3という)の再犯抑止効果を検討した。研究結果は,第52回日本犯罪心理学会及び第66回アメリカ犯罪学会において発表した。また,研究結果は,適宜,法務省矯正局成人矯正課,府中刑務所処遇効果検証班に報告しているほか,法務省矯正局の職員研修施設である矯正研修所の各種研修において,処遇現場の担当者にフィードバックしている。 解析は,R3がランダムに割付けられていないことを考慮し,傾向スコア,具体的にはIPW推定量を用い,R3への割り付けがあたかもランダムであるかのように共変量を調整したうえで,生存分析を行った。なお,R3処遇には,処遇期間やセッションの回数によって,高密度,中密度,低密度,及びその他の4つの処遇群が設定され,これらと非処遇群が存在するので,実際には,5群への割付けを考慮している。 解析は,まず,5群への割り付けに関する傾向スコアを多重ロジスティック回帰によって求めた。次に,傾向スコアによりIPW推定量を求め,これを用いて,カプランーマイヤー生存曲線を5群ごとに描き,それらを比較した。その結果,低密度群と非処遇群の間にだけ,有意差が認められた。このことは,R3処遇が再犯抑止に効果があるのは,低密度群に対してだけであることを示している。 この結果は,次により検討中である。(1)傾向スコアによるバイアス減少が十分でないので,より大きく減少させることが可能なモデルを探る。(2)これまでの解析結果が,実務的にどのように考えることができるのかを,実際の処遇を観察し,現場の処遇担当者と意見交換する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
強制わいせつによる受刑者に関して,傾向スコアを用いて,生存分析を行い,処遇の再犯抑止効果を統計的に検証するまでは実施できており,おおむね設定した目的は達成されたと言える。今後は,検討の対象を全性犯罪受刑者に広げていくことと,傾向スコアによる調整がより効果的に行えるようにモデルを検討するという課題が残されている。
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Strategy for Future Research Activity |
以下の2つである。第一は,検討の対象を,強制わいせつだけでなく,性犯罪受刑者全体に広げていくことである。本研究の目的の一つは,日本の刑務所で実施されている性犯罪受刑者処遇の効果検証であるから,その対象は全体に広げて行うことが要請される。このことは,全体としての処遇システムを今後どのように設計していくかという問題に対する提言を,どう行うかとも関連する。第二は,傾向スコアによるバイアスの減少をさらに効果的に行えるようにモデルを改善していくことである。これが十分に行えないと,処遇群と非処遇群との比較が不正確になってしまうおそれがある。これが解析上の最大の課題と言える。
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Causes of Carryover |
差額は,主としてPCの購入を平成26年度に行わなかったことによるものである。その理由は,現在使用中のPCは,高度な統計計算ではやや速度が遅いものの使用に耐えうるので,できるだけ長くこれを使用し,限界に達したところで,最新のPCの購入に充てるほうが,コスト・パフォーマンスが高いためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
統計解析に要求されるPCの能力と,現有のPCの性能を勘案し,現有のPCでは研究効率が著しく落ちると感じられた時点で,最新のPCを購入する。これは,単にPCの性能だけでなく,使用する統計ソフトや解析手法に強く依存するので,いつの時点で購入とは決めがたいが,本研究の期間内には,どうしても最新型にしなければならないものと思われる。
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Research Products
(2 results)