2014 Fiscal Year Research-status Report
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26380927
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Research Institution | Hyogo University of Teacher Education |
Principal Investigator |
市井 雅哉 兵庫教育大学, 学校教育研究科(研究院), 教授 (10267445)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉川 久史 浜松医科大学, 医学部, 助教 (30610852)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 眼球運動 / サッケード眼球運動 / 追従眼球運動 / 肯定的記憶 / 安全な場所 / モダリティ / 触覚刺激 |
Outline of Annual Research Achievements |
安全感を感じる場所のイメージに対する、サッケード眼球運動(周辺視野にある対象を視野中心にとらえるために起こる急速な眼球運動)と追従眼球運動(運動する対象を追うように起こるなめらかな眼球運動)の違いを調べる実験を行った。15名の対象者に実施した。25年度に行った同様 の手続きの実験対象者15名分のデータと合わせて30名のデータを分析した。その結果、イメージの鮮明さおよび安全感には違いがなく、イメージへの没入はサッケード眼球運動条件において低下した。安全な場所のワークで眼球運動を加える場合は、追従眼球運動の方が望ましいことが示唆 された。本研究の成果は2014年の日本認知・行動療法学会第40回大会で発表した。 30名の健常な大学生に対して、RDIの手続きにおける両側性刺激の異なるモダリティ(低速の眼球運動、低速の触覚刺激(閉眼)、刺激なし)の効果を被験者内比較によって見た。従属変数は一般感情尺度、イメージの鮮明さ、感情の強さであった。時間、条件の被験者内2要因による分散分析の結果、イメージの鮮明さは、感情強度は、条件によらず増加することがわかった。一般感情尺度の解釈度である安静の尺度において、時間と条件の交互作用が有意であった。下位検定の結果、触覚条件においてのみ、安静感情が高まっていた。しかし、プリテスト時点での条件差が有意であった可能性も考え、共分散分析を行った結果、ポストテスト時点において、刺激なしと触覚刺激に傾向としての差が見つかった。結論としては、3条件共に有効であり、肯定的な記憶の想起に対して、ゆっくりの刺激は決して否定的には作用しないことがわかった。閉眼しての触覚刺激は安静な感情を導くようである。これらの結果は肯定的な記憶に対するオランダの提案を支持していないようである。本研究の結果はEMDR Association in India(2015)で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでの研究から、サッケード眼球運動を加えるとイメージに没入しにくくなるが、追従眼球運動では眼球を動かさない場合と違いがないことが 示された。これは、イメージ課題中に高い負荷の感覚入力刺激を加えるとそのイメージを保持できなくなるというワーキング・メモリ・モデルを支 持するものであった。また、眼球運動の作用メカニズムを調べるための実験プロトコルや適切な実験器具が把握でき、臨床群に実施していくための 準備が整った。 ゆっくりの眼球運動や触覚刺激の有効性が示されたが、これらの刺激なしと比べての優位性に関してはまだ不明確な部分もある。より有効性を高める他の方法に関しての探求へ進むことが次の段階としてはあるだろう。これまでは概ね良好に進んでいる。 今年度はNIRSを用いての研究が、機械の故障のために実施できなかった。その部分に遅れがある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、眼球運動がイメージに及ぼす影響について、対象者をPTSDを持つ成人に拡大して研究を行う。PTSDを持つ成人は健康な成人に比べ て、安全や喜びのような肯定的な感情を感じにくい。さらに、トラウマ記憶は通常の記憶よりも鮮明で変化が起こりにくい。健常な成人とは母集団 が異なっている可能性があるため、調査が必要である。実際にPTSD診断のある成人を対象にするため、実験を行うタイミングやイメージ想起の 際に起きる負担の軽減、実験後のフォローアップなど倫理的に問題がないことを十分確認して実施する必要がある。 眼球運動という刺激に慣れることや眼球運動によって両半球を刺激しておくことが、より有効性を高めるかに関しての実験を計画している。 NIRSの機械の修理は完了したため、EMDRによる否定的記憶の処理データを収集する。
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Causes of Carryover |
実施予定だった実験が機材の不調により、一部実施できなかったことによる。次年度に実施する予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験協力者約20名に対しての実験を行う。一人ずつの拘束時間が約2時間、交通費も含めて、謝金を支払う予定にしている。
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