2014 Fiscal Year Research-status Report
原発事故環境下における仮設住宅在住の児童生徒に対するストレスマネジメント
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26380957
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Research Institution | Tokyo Kasei University |
Principal Investigator |
三浦 正江 東京家政大学, 人文学部, 教授 (00330134)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡安 孝弘 明治大学, 文学部, 教授 (40224084)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 東日本大震災 / 仮設住宅 / ストレス / ポジティブイベント / ソーシャルサポート / 子ども |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究全体の目的は,①原発事故により福島県内の仮設住宅で生活している児童生徒の心理状態をネガティブ(ストレス)要因およびポジティブ要因の両側面から明らかにすること,②①の成果に基づき,福島県内の仮設住宅で生活している児童生徒を対象としたストレスマネジメント・プログラムを実施して効果を検証することであった。 平成26年度は,3グループの小学生(福島県内仮設住宅在住者,福島県内自宅在住者,埼玉県内自宅在住者)および2グループの中学生(福島県内仮設住宅在住者,埼玉県内自宅在住者)を対象に質問紙調査を行った。 その結果,仮設の小学生は他の児童に比べて,①いじめや遊びに関するストレッサー経験が多い,②家族や習い事に関するポジティブイベントの経験が少ない,③イライラや無気力感が強いことが示された。また,仮設の小学生は福島県内自宅の児童に比べて,④担任教師や友だちからのサポート期待が低い,⑤現在の遊び活動に不満を感じている割合が多い,⑥自宅学習に集中できない割合が多いといった傾向がみられた。 中学生では,仮設の生徒は埼玉の生徒に比べて,①友だちや悪口に関するストレッサー経験が多い,②ゆううつな気分や不安感,イライラ,無気力,身体症状など全般的なストレス症状が強い,③中途覚醒や早期覚醒などを経験している割合が多い,④友だちからのサポート期待が低いことが示された。また仮設の中学生の方が,④現在の遊び活動に不満を感じている割合が多いが,⑤自宅学習に集中できる割合には違いがみられなかった。 一方,小中学生ともに,グループにかかわらずストレッサーの経験よりもポジティブイベントの経験の方が多く,ポジティブ感情の経験にはグループによる違いがみられないといった特徴も示された。以上の結果を国内の複数の学会において発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の計画は,(1)福島県内の仮設住宅で生活する小中学生の心理状態に関する実態調査の実施,(2)仮設住宅で生活する小中学生を対象としたストレスマネジメント・プログラム考案のための準備であった。 (1)については,①福島県内仮設住宅で生活する小中学生,②福島県内自宅で生活する小学生,③埼玉県内自宅で生活する小中学生を対象に,①日常生活におけるストレッサー経験,②日常生活におけるポジティブイベント経験,③ストレス反応,④ポジティブ感情,⑤知覚されたソーシャルサポート,⑥生活習慣(遊び,学習,睡眠など)に関する質問紙調査を行った。そして,得られたデータの分析結果について国内の複数の学会で発表を行った。現在,論文の執筆準備を進めている段階である。 (2)については,関連文献の収集を行ったものの整理が終わっていない状況である。また,次年度の研究計画については,分担研究者をはじめとした研究関係者で複数回の打ち合わせを行い,実態調査の結果を踏まえた上で準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の調査結果を踏まえて,平成27年度は仮設住宅で生活する小中学生を対象としたストレスマネジメント・プログラムを実施する計画になっている。実態調査の結果から,イライラや無気力などのストレス反応の高さや睡眠状態の悪さが示されたが,この原因の一つとして良好な友人関係が築けていない可能性(いじめや悪口に関するストレッサーの経験が多いこと,友だちからのサポート得点が低いこと),あるいは遊び活動が不十分(遊びへの満足度の低さ)であることが考えられた。 しかし一方で,実態調査を実施してみて,仮設住宅で生活する小中学生の心理状態について理解するためには,仮設住宅で生活することに伴う環境的要因(居住環境,学校環境,家庭環境,遊び場所の有無など)や震災から現在に至るまでの諸要因の時系列変化についても考慮する必要性が強く感じられた。これらを明らかにすることで,仮設在住小中学生を対象としたプログラムを考案する際に,どのような視点からのかかわりが効果的であるかを明確にできると考えられる。 そこで平成27年度は,まず福島県内仮設住宅で生活する小中学生の支援者を対象としたインタビュー調査を行い,子どもたちを取り巻く環境要因,震災からの変化,あるいは支援者からみた支援の在り方等について検討することを計画している。実態調査では明らかにできなかった視点からの検討を加えることで,仮設住宅在住の小中学生の状態をより深く理解した上で,効果的なストレスマネジメント・プログラムの考案を行いたい。
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Causes of Carryover |
平成26年度は,質問紙調査に関するデータ入力や関連資料の収集を補助してもらうための人件費の支出が予定よりも少額だった。補助業務を依頼したい期間に補助者の日程的な都合がつかずに補助業務の依頼できなかったこと,あるいはすでに収集していた関連資料が一定量あったため,資料収集に要する時間が予想よりも少なかったことが理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は,福島県内仮設住宅で生活する小中学生を震災当時から継続して支援してきている支援者を対象としたインタビュー調査を計画している。そのため,研究実施の打ち合わせやインタビュー実施(データ収集)を目的とした旅費の支出が多くなることが予想される。また,インタビュー協力者への謝金やデータの収集および整理作業を補助してもらうための人件費(謝金)も見込まれる。これらの他に,情報収集や成果発表を目的とした旅費,インタビュー調査等で必要とされる物品費などを支出する予定である。
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Research Products
(7 results)