2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26380972
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Research Institution | Koyasan University |
Principal Investigator |
森崎 雅好 高野山大学, 文学部, 助教 (00581159)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 自死遺族 / 複雑性悲嘆 / 日本語版ITG / MMPI新日本版 / 二次的受傷 / 半構造化面接 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、自死遺族への心理社会的支援において配慮すべき視点を提示するために、1.横断的及び縦断的視点による自死遺族の経年毎の心理的特徴の変化の把握、2.経年による生活上の困難事、及び、心理的苦痛の変化、3.遺族の続柄の違いによる心理的特徴の差異の3点を検討することを目的としている。 本研究での具体的な調査方法は、死別後1・2年、3・4年、5年以上の遺族の方の3グループ間での量的及び質的検討を行うことである。量的な検討では、遺族の健康状態を把握するために、K6、SF-8を、また、複雑性悲嘆の程度を測定する日本語版ITG(Inventory of Traumatic Grief)、及び、心理的特徴を把握するためにMMPI新日本語版を使用する。質的な検討では、経年による生活上の困難事や心理的苦痛の変化などについてのインタビュー調査を行う。併せて、遺族の続柄別による心理的特徴の差違についての検討を行う。 平成27年度は、近畿圏内の各団体の遺族支援活動に参加し12名の協力を得た。昨年度の調査協力者数11名を合わせた各グループ間での内訳は、1・2年目が5名、3・4年目が8名、5年以上が10名である。調査協力者数が少ないため、量的な検討は行っていないが、インタビュー調査からは、昨年度と同様の傾向がみられた。例えば、死別直後は、自制や自罰の思いが強いものの、次第に「自分の時間を作ってみようという気持ちになった」という声に代表されるような、「自身を赦す」といった心理状態に変化していく様子が語られた。また、悲しみから少しでも立ち直ることができるようになったと感じたのは、死別後3~5年経過した頃であったとの声が聞かれ、辛く悲しい気持ちは年数が経ってもかわらないものの、抑うつ的になる日が減ってくるのもこの時期になるようである。 次年度も引き続き調査を行い、量的及び質的な検討を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、調査協力者を死別後1・2年、3・4年、5年以降の3グループに分類し、量的、及び、質的検討を行うことを目的とし、5年間で各グループ30~40名程度の協力者を想定している。そのため、毎年、グループ毎に10名程度の協力者数を計画しているが、平成26、27年度の調査協力者が少ないため、研究計画の達成度はやや遅れている。 その要因として、平成27年度に協力を依頼したが、活動団体から公に依頼することを控えてほしいとの要望があり、報告者が活動参加者に個別に協力依頼をせざるを得ず、予定人数に達することが困難であった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究においては、昨年度に引き続き、調査協力者数の増加が課題である。現在、愛知県、岐阜県、京都府、大阪府、和歌山県の5つの支援団体の活動に参加し、協力者を募っている。今後も、これらの支援団体の活動への参加回数を増やすと同時に、近畿圏内で活動している他の支援団体への協力依頼を行うこととする。 また、平成28年4月より、和歌山県の自死遺族支援に関する事業が予算減額となり、民間団体への助成事業に変更となった。これに伴い、報告者を事務局長とする民間団体を立ち上げ、比較的自由度の高い自死遺族支援活動が可能となった。事務局長である報告者の裁量自由度も高くなったため、支援活動の機会を増やすと同時に、調査協力者を募ることに力を入れていく方針である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた費目は、主として、旅費である。本研究の調査方法は、調査協力者への質問紙検査の実施とインタビュー調査であり、報告者が調査地点に到るまでの旅費が必要となる。平成27年度中に、報告者の主たる勤務地が都心部(大阪市内のサテライト教室)となったことから、勤務校近くの住居(高野町高野山)から都心部近くに転居した。そのため、住居地から調査地点までの交通費が当初計画よりも抑制され、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
調査協力者数が少ないことが現時点での課題であることから、次年度は、これまで以上に多くの自死遺族支援団体の活動に参加し、協力者を募り、調査を行う予定である。その調査地点までの交通費として、助成金を使用する計画である。
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