2015 Fiscal Year Research-status Report
視覚・聴覚同時呈示法を用いた事象関連電位による虚偽検出
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26380973
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Research Institution | Fukuyama University |
Principal Investigator |
平 伸二 福山大学, 人間文化学部, 教授 (30330731)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 虚偽検出 / 事象関連電位 / P300 / 視覚・聴覚同時呈示法 / 同比率 |
Outline of Annual Research Achievements |
視覚・聴覚同時呈示法によるP300を指標とした虚偽検出の効果を検証するため, 6つの研究を3年間で行い,その成果を国内外の学会で発表していく中で,平成26年度は,自己姓を用いた単一プローブ法による検討(研究1),模擬窃盗シナリオ課題を用いた多重プローブ法による検討を行った(研究2)。そして,平成27年度は,視覚・聴覚同時呈示法における文字刺激と画像刺激の比較(研究3)と視覚・聴覚同時呈示法における末梢指標と中枢指標の比較(研究4)を行う予定であったが,研究1と2においてより短時間での検査を目指して,裁決刺激と非裁決刺激の呈示比率を1:1とした結果,十分な成果が得られなかった。そのため,研究3に変えて視覚呈示と聴覚呈示の単独呈示を実施して,研究1,2の同時呈示法と比較した。さらに,刺激呈示間隔を従来の1 s から最大の振幅が得られる4 sに変更して実験を行った。その結果,単独呈示においても,裁決刺激と非裁決刺激の呈示比率を1:1とした場合,両刺激間に有意差が生じないこと,同時呈示と単独呈示間に有意差がなく,裁決刺激と非裁決刺激の呈示比率を1:1から従来の1:4と戻す必要性が明らかとなった。なお,研究4は予定通り実施し,自己姓を裁決刺激として呈示比率1:1で中枢指標の脳波と末梢指標の心拍を計測して比較を行った。しかし,P300においても心拍インターバル(RRI),及び心拍変動から得られる交感神経系と副交感神経系の指標であるHF,LF/HFともに裁決刺激と非裁決刺激の間に有意差が認められなかった。つまり,P300の生起要因である,刺激の有意味性と呈示頻度の低さの両要因が必要であることが再確認された。以上のことから,最終年度では,視覚・聴覚同時呈示法を継続するが,裁決刺激と非裁決刺激の呈示比率を1:1から従来の1:4に戻して,予定通り研究3,5,6を実施することとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ここまで2年間で予定していた研究1,2,4を実施するとともに,研究3より優先的に視覚・聴覚刺激の単独呈示による実験も行った。その結果,検査時間短縮のために研究計画に盛り込んでいた,裁決刺激と非裁決刺激の呈示比率を1:1から従来の1:4へ戻す必要性が明らかとなった。これまでの自身の研究成果(平・濱本・古満,2014)とレビュー論文(久保・入戸野・宮谷,2007)から,刺激の有意味性による検出可能性を探ってきたが,P300の生起要因である,刺激の有意味性とともに,刺激が低頻度であることの重要性が再確認された。したがって,最終年度では従来の1:4で実施する実験プロトコルに書き替えて残りの研究を遂行する準備が整っている。 また,これまでの研究成果は,日本心理学会第79回大会,中国四国心理学会第71回大会で発表をした他,第34回日本生理心理学会大会(2016年5月)で発表する予定である。さらに,福山大学人間文化学部紀要にも研究成果を論文化して掲載している(平・山下・皿谷・濱本・古満,2016)。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに実施した研究1,2,4から明確となった刺激呈示頻度の問題を見直し,従来の裁決刺激と非裁決刺激の呈示比率1:4による実験で残りの研究を実施する。未着手となった研究3では,視覚・聴覚同時呈示法による文字刺激と画像刺激の優位性に関し,模擬窃盗課題を実施して検証する。さらに,研究5では記憶課題直後ではなく,1ヶ月以上経過した時点での検出可能性,研究6では妨害工作であるcountermeasuresを指示した場合の検出可能性について検証する。研究成果に関しては,学会発表と論文投稿で発信するとともに,電子メールで国内外の研究者と今後の活用方法について協議する。国際シンポジウム,海外からの研究者受け入れ,専門書企画の話も出ており,研究成果がより広く活用されるように努めていきたい。
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Causes of Carryover |
アメリカシアトルで開催された55th Society for Psychophysiological Research Annual Meeting(2015年10月)に参加予定であったが,学部長就任にともなう大学入試業務との日程重複があり,国際学会での発表を行わなかったため,海外出張にともなう経費に関する支出が少なくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年7月24日から29日の間,横浜市で開催される第31回国際心理学会議での研究成果の発表にともなう旅費に使用する。また,イギリスのHuddersfield 大学のInternational Research Centre for Investigative Psychology(David Canterが所長)の研究者が,本研究室での在外研究を望んでいることから(国際奨学金が採択された場合,2016年9月から約半年受け入れ),全国の科学捜査研究所及び科学警察研究所の研究者を集めた研究会の運営に関する費用の一部としたい。また,過去に海外研究者の短期の受け入れ,国際学会でのシンポジウム等への招聘(過去3回)を経験しており, Northwestern大学のPeter Rosenfeldなどの世界の主要メンバーとの情報共有を推進するため,英語版のHP開設の経費としても検討したい。
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