2015 Fiscal Year Research-status Report
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26380984
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
北神 慎司 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (00359879)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 流暢性 / 人物識別手続き / 写真面割 / 目撃証言 / 二重過程理論 / 記憶 |
Outline of Annual Research Achievements |
流暢性(fluency)とは刺激に対する情報処理の速さや容易さの主観的感覚である(Oppenheimer, 2008; Alter & Oppenheimer, 2009).これまでの研究によって,流暢性が高ければ,その情報の本質的価値にかかわらず,好ましさ,美しさ,真実性,頻度,典型性,信頼性,動機づけなど,非常に多くの認知的あるいは社会的判断にポジティブなバイアスがかかること(例:流暢性が高い→より好ましい)が明らかとなっている.流暢性という概念の未開拓の応用分野として,本研究では,目撃証言研究の中でも写真面割と呼ばれる人物識別手続きに着目し,目撃者の人物識別において顔写真の画質によって操作される知覚的流暢性の違い(perceptual fluency)がどのような影響を及ぼすか検討した。今年度は,仮説通りの結果が得られなかった昨年度行った実験の,特に手続きについて改良を加え,次のような2つの実験を行った.まず,2つの実験に共通する刺激の操作として,実験に用いた写真には白色のマスク画像を重ね,マスク画像の透過率を変えることで流暢性の低い刺激と流暢性の高い刺激を作成した.そして,実験1では,参加者に顔写真の再認記憶課題を課した.また,実験2では,実験1の実験条件上の問題点を修正した上で同様の実験を行った.その結果,人物識別時における流暢性の違いは,参加者の人物識別に影響を及ぼしているとしても,その影響は今回の実験結果を見る限りは,それほど大きなものではない可能性が示唆された.この点について,実験デザインおよび刺激の提示回数の観点から考察を加えた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で記述したように,研究計画2年目として,当初の計画通りの実験を実施したため,おおむね順調に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の実験と比較すれば,実験方法に改良を加えた研究計画2年目の実験では統計的に有意な結果が得られたものの,その効果量は小さく,応用可能性を考えるためには,現象の頑健性を確認する必要がある.そこで,まず,顔写真の刺激セットの変更など,さらなる実験方法の改良を行った上で,再度,実験を行う.なお,これらの実験において,万が一,実験条件や手続きの設定に不備が見つかった場合には,途中で実験をやめ,当該部分を改善した後,新たにデータを取り直すこととする.
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Causes of Carryover |
当初は個別実験を予定していたが,Webによるオンライン実験を行っことで,その分,人件費および謝金が低く抑えられたため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額については,当初予定の実験の前に,現象の頑健性を確認するため,実験刺激の選定に関わる予備的調査および実験を行う必要が生じたため,これに関わる経費(物品費および人件費・謝金)として,当該年度の助成金とあわせて使用する予定である.
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Research Products
(4 results)