2014 Fiscal Year Research-status Report
妊娠・出産期女性の感情障害脆弱性の基盤となる神経内分泌機構の実験的検討
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26380990
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
富原 一哉 鹿児島大学, 法文学部, 教授 (00272146)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小川 園子 筑波大学, 人間総合科学研究科(系), 教授 (50396610)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | エストロゲン / 不安障害 / 情動 / 産後うつ / HPA軸 / コルチコステロン / 恐怖条件づけ学習 / マウス |
Outline of Annual Research Achievements |
女性は男性の2倍程度抑うつや不安などの情動障害に罹患しやすく、その発症にはエストロゲンなどの性腺ホルモン深く関与すると考えられている。しかしながら、エストロゲンはその用量や作用期間等により、情動関連行動に及ぼす効果が異なり、我々がこれまでマウスを用いて行ってきた研究では、発情期レベルのエストロゲンでは情動反応は抑制されるが、妊娠期に相当する高濃度の場合はむしろ情動反応が更新することが示されている。また、2つのエストロゲン受容体サブタイプ、ERαとERβのうち、情動抑制効果にはERβが、情動亢進効果にはERαが主に関与することも、ERαアゴニストとERβアゴニストを長期慢性投与した実験で確認している。 平成26年度は、先行研究等によりエストロゲンの情動亢進効果にはストレス対処の神経内分泌反応系である視床下部―下垂体―副腎軸(HPA軸)が関与することが示唆されたため、エストロゲンの情動亢進が副腎除去により減衰するかどうかを検証した。結果として、副腎除去は、恐怖学習を全体的に低下させるものの、エストロゲンによる恐怖学習促進効果には影響を及ぼさないことが示された。したがって、HPA軸がエストロゲンの情動亢進効果に関与するとしても、それは視床下部―下垂体レベルであると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の実験で、副腎除去がメスマウスの恐怖学習を全体的に低下させるものの、エストロゲンによる恐怖学習促進効果には影響を及ぼさない事を発見した。実験内容は幾分修正したが、平成26年度についてはほぼ計画の通り実行できたと考えられる。ただし,結果は当初期待したものではなかったため、今後の研究計画は若干変更の必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
副腎除去がエストロゲンの情動亢進効果に影響を及ぼさないことが示されたため、平成27年度は視床下部でのCRHやその受容体発現に対するエストロゲン高用量投与の効果を検証し、高用量エストロゲンの情動亢進効果とHPA軸の関わりを検証していくこととする。また、これまで我々の研究室では恐怖学習については文脈恐怖条件づけしか検討してこなかったが、近年他の研究グループによって文脈恐怖条件づけと手がかり恐怖条件づけとで、エストロゲンの及ぼす効果が異なることが示唆されたため、これについても検討を行うこととする。 また28年度においては、特定の領域のERαの機能を阻害することで、高用量エストロゲンの情動亢進効果を確定することを試みる。
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Causes of Carryover |
当初想定していた結果が示されなかったために、予定した吸光マイクロプレートリーダーとこれに関連する消耗品の購入が遅れ、残額が生じた。これらについては、H27年度開始早々に執行予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H27年度研究費については、上述の吸光マイクロプレートリーダーの他、各種アゴニスト、各種ホルモンの免疫化学測定キット等、実験実施に必要な消耗品の購入に使用する。また、脳内微量注入のためのマイクロインジェクションポンプも購入する。さらに、研究成果発表のための学会参加費等にも用いる。
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Research Products
(7 results)