顔の特異性の知覚と笑顔の知覚の関係性の検討

2014 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 26380991
• Research Institution: Miyagi University
• Principal Investigator: 真覚 健 宮城大学, 看護学部, 教授 (40199675)
• Project Period (FY): 2014-04-01 – 2017-03-31
• Keywords: 顔の印象 / 顔の障害 / 顔の表情 / 顔の特異性 / 笑顔

Outline of Annual Research Achievements

特殊メイクを用いてアザを模倣したシールを作成し、それを健常者の顔に貼りつけ、中立顔と笑顔を撮影したものを刺激画像として、アザの主観的な顕著性と顔に対する印象の関係について実験的検討を行った。
モデルは男子学生8名で、アザ・シールについては大きさ・濃さ・色味の異なるものを作成し、顔中のシールを貼る位置についても目元と口元の2条件を設定した。アザ・シールの位置と大きさ、位置と濃さ、大きさと濃さ、濃さと色味を操作した４つの評定実験を行った。被験者に求めた課題は、アザの目立ちやすさと「明るい」「まじめな」など顔についての12項目の形容詞について6段階評定を行うことであった。
アザの目立ちやすさについては、より大きいアザ、より濃いアザが目立つものの、位置と色味については、一貫した傾向は見られなかった。表情の効果については、すべての顔画像ではないものの中立顔でアザがより目立つ画像があったが、逆に笑顔でアザが目立つ画像はなかった。
顔の印象に対するアザの影響については、アザが知覚的に顕著であるほど顔の印象をネガティブな方向に変化させること、アザがある条件においても笑顔の表出によって顔の印象がポジティブな方向に変化することを仮説として考えていた。笑顔の表出による顔の印象への影響については、アザの有無にかかわらず笑顔において印象がポジティブな方向に変化していることが示された。中立顔においてはアザがあることで印象がネガティブな方向に変化することが示されたものの、アザの大きさや濃さは印象の変化に影響せず、アザの知覚的顕著性と顔の印象の低下は独立であることが示唆された。また、アザのある笑顔では、アザのない顔よりも顔の印象はポジティブなものになることが示され、Rumsey(1986)の報告を支持する結果が得られた。

Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

当初の計画では、特殊メイクによって傷の瘢痕とアザを健常者の顔に描き、それを撮影したものを刺激画像として、顔の特異性知覚における笑顔表出の影響と、笑顔知覚における特異性の位置の影響を、反応時間を測度として検討する予定であった。反応時間では差異を十分検出できないため、評定法に切り替えて実験を行ったところ、アザのある笑顔では健常な笑顔よりも顔の印象がよりポジティブになるという想定していなかった結果が得られた。これは新しい知見である。傷の瘢痕の影響についての実験は未実施であるが、新しい知見が得られたことから、研究はおおむね順調に進展しているといえる。

Strategy for Future Research Activity

顔の障害の知覚的顕著性と顔の印象への影響が比較的独立であること、アザのある顔の笑顔は健常な顔の笑顔よりも印象をポジティブにするという研究結果がアーティファクトでないことを、刺激条件・実験条件を変えて確認する。また、傷の瘢痕についてもアザの場合と同様の結果が得られるかについて実験的な検討を加える。
アザや傷の瘢痕がある顔に対する他者の注視行動が、中立顔と笑顔で異なるものであるか静止画像を用いて検討する。

Causes of Carryover

実験の遂行にあたって、被験者への謝礼を支出しなかったこと、データの分析のためにアルバイトを依頼しなかったこと、発表を予定していた学会に業務スケジュールの都合で参加できなくなったことにより次年度使用額が生じた。

Expenditure Plan for Carryover Budget

研究遂行に従って適切に使用していく。平成27年度の研究経費では国際学会での研究成果の発表を予定していたが、研究結果をまとめて平成28年度に国際学会で発表することを予定している。