2015 Fiscal Year Research-status Report
習慣的な暴力ゲーム経験と動機活性化特性の影響:生理心理学的研究
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26380996
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
栗田 聡子 三重大学, 国際交流センター, 准教授 (60588317)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片山 順一 関西学院大学, 文学部, 教授 (80211845)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 暴力的ゲーム経験の影響 / 情動的な情報処理 / 生理心理的反応 / 脳波 / 脱感作 / 馴化 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 2015年(27年)度に実施した生理心理実験結果の分析 栗田(代表者)による先行研究と当該研究結果(2015年2月に実施)との共通点は、暴力的ゲームの経験値が情動的な画像を処理中の脳波に影響として表れたことである。暴力的な内容を含む不快(ネガティブ)画像を見ている間の脳波を測定したところ、先行研究と同じく日常的に暴力的ゲームで遊ぶグループ(暴力的ゲーム高群)の脳波(画像呈示後500ms以降の後期脳波)において、暴力的ゲーム低群よりも縮小した振幅を見せた。今年度の研究結果で新たに発見されたことの一つは、ゲーム経験が脳波の減少(馴化)のレベルにあたえる影響である。暴力的ゲームの経験低群では、不快な画像を見ている間の脳波の減少が快画像(過激なスポーツを含む)を見ている間の脳波現象よりも遅いという傾向を見せたが、暴力的ゲームの経験高群では逆の傾向が見られた。この結果は、暴力的ゲームで遊ぶ習慣が、暴力的な内容を含む不快画像に対して早く慣れさせる影響を持つことを示唆している。本来、人間を含む生物は危険で不快な刺激や対象に対して素早く激しい反応を示し、反応の馴化も遅いことがわかっている。当該研究による発見は、暴力的ゲーム経験が与える情動的な情報処理への影響(脱感作)のメカニズムを解明する点において極めて重要であると言えよう。
2. 新たな仮説をもとにした実験実施 上記の発見は、暴力的ゲームの経験値は、情動的な情報を処理中の脳に影響を与えている可能性をさらに高めた。その生理的影響が情報処理中の行動データ(2次課題への反応時間:STRT)にあらわれるという仮説をたて、関西学院大学の実験室にて実験を実施した。測定した生理心理データは脳波と皮膚コンダクタンス、心拍数で、参加者数は現時点で計18名である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請時に予定していた初年度(2014年度)の実施内容が2015年度分まで進んだため、2015年度は当初2016年度に予定していた実験(情動的画像を呈示中の行動データの収集)を実施することができ、予定よりも早く研究を進めることができている。この点は、共同研究者(関西学院大学)の受け入れと環境、院生アシスタントの強力なサポートによるところが特に大きい。今年度(2015年)に研究代表者が勤務先を異動することになり、昨年度のデータ解析は終了していないが、概ね予測していた通りの進展状況である。
研究発表に関しては、2014年度に収集したデータを2016年秋の国際学会で発表する準備をしており、ほぼ当初の予定どおりである。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度は、収集したデータの解析を中心に進めていく予定である。研究目的の一つである、暴力的ゲームの影響と動機システム活性化特性における個人差との関連、そして中枢データと末梢データ、行動データ(二次課題反応)との関連について結果を出す。その結果内容により新たな仮説と実験計画をたて、1月から3月にかけて生理心理実験を実施する予定である。同時に、2015年度に実施した実験の参加者数(現時点でn=18)も増やしていく。
なお、研究発表の開始は2016年秋に開催される国際学会であり、2015年2月(2014年度)に実施した実験結果を発表する予定である。その後、毎年国内1学会、海外での学会1,2学会で発表し、論文執筆も合わせて進めていく。
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Causes of Carryover |
当初必要経費と予測された実験関連用品(消耗品含む)が、関西学院大学所有の物品を使用させていただくことで、その分の経費が削減されたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
脳波計測に必要な電極やキャップなど、消耗品の購入を中心に使用させていただく予定。
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