2016 Fiscal Year Research-status Report
習慣的な暴力ゲーム経験と動機活性化特性の影響:生理心理学的研究
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26380996
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
栗田 聡子 三重大学, 国際交流センター, 准教授 (60588317)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片山 順一 関西学院大学, 文学部, 教授 (80211845)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 暴力的ゲーム / 脱感作 / 生理心理指標 / 脳波 / ERP / 動機システム / 認知 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.脳波実験データの再分析による検討 昨年度、2014年度に収集した脳波データを分析して結果を出したのだが、不自然なノイズが所々見られていた。そこで、脳波と関係のないアーチファクトを除くための異なるデータ処理方法3種(ICAなし、ICA処理のみ、ICA処理後Adjust使用)で出した結果を比較検討した。結果、ICA(独立成分分析:Independent component analysis)だけでなく、アーチファクトを自動的に除去するAdjustも併用したデータの波形が最も明確で、被験者間要因(暴力ゲームの経験値)や刺激特性の主効果、相互作用効果ともに顕著に表れることがわかった。この再分析がもたらした重要な点は、当初の仮説である「暴力ゲームの経験値が高い参加者は、暴力的な内容を含むネガティブな刺激に接した際、情報処理の初期段階である注目レベルは高いが、後期の情動的反応レベルは低い」という傾向が脳波データにより顕著にあらわれたことである。
2.実験データの追加収集 上記の結果は、暴力的ゲームの経験値は、情動的な情報を処理中の脳に影響を与えている可能性をさらに高めた。その生理的影響が認知的な行動であるSTRT(二次課題反応時間 :Secondary Task Reaction Time)にあらわれるのであれば、感情的に回避的な状況でも素早く課題を遂行することができる、という新たな仮説をサポートする。その仮説をもとに、昨年度18名分収集した実験を継続して実施し、新たに20名分収集した。二次課題反応時間と生理心理指標の関連を考察するための実験データは計38名となり、2017年度に分析する実験データの信頼性をより高めることとなった。(参加者は、前回と同じく研究代表者の前任校である大阪経済大学のご協力により集められた。)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度(2014年度)は予定していた2年度分の実験を実施できたため、当初は今年度から実施予定の実験を昨年度から収集することができていた。よって、今年度は昨年度と同じ実験を継続して実施し、データ数を増加させたことで、ほぼ申請時のスケジュールどおりの進捗状況と言える。脳波データの解析は共同研究者(関西学院)の協力を得て順調に進んでいるが、一度分析した結果を再分析して見直すこともあった。時間はかかるが、より正確な結果を得るためには必要な作業であったと考えている。
末梢データ(心拍、皮膚コンダクタンス)に関しては、研究代表者が初めて使用するソフトウェアを数台組み合わせて収集していることもあり、データ構築に向けてソフトウェア制作会社での研修を含めて予想以上の時間を要している。視覚的に確認しながらのデータ構築は、時間を要する一方でその信頼性は高くなる面もあるのだが、今後は効率性を上げることが課題である。研究発表に関しては、予定どおり2016年に米国ミネアポリスで開催されたSPR(Society for Psychophysiological Research)学会で脳波データ部分の発表を終えることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
プロジェクトの最終年度である2017年度前半は、今まで収集したデータの整理と解析を中心にすすめる予定である。脳波データの解析は研究分担者(関西学院 片山教授)の指導と院生アシスタントの協力のもとで行い、末梢データ(皮膚コンダクタンスや心拍数)の解析は基本的に研究代表者が行う。ただし、末梢データの構築には多大な時間を要することから、構築に必要なプログラムを作成(外注)するなどして効率をあげる方策を検討していく。
研究のアウトプットとして、国内学会では日本心理学会、国際学会ではSPR(Society for Psychophysiological Research)やICA(International Communication Association)で発表していく予定であるが、今後は研究内容をより詳細に紹介できる論文での発表に注力していきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
1.当初、必要経費として予測された実験関連用品(消耗品含む)の一部を、関西学院大学所有の物品を使用させていただくことで経費削減となった。
2. 関西学院への分担金から支出予定していた一部の人件費(プリテスト参加者への謝金)を三重大学分から支出したことや、院生アシスタントへの支出額が予測以下であったことで、分担金に余裕が出た。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
1. 脳波解析など、引き続き関西学院の院生アシスタントへの人件費やデータの追加実験実施に使用させていただく予定。
2 . 研究代表者側の職場異動(大阪から三重)と国際学会での発表等に伴い、旅費と人件費(三重大学側の予算)への支出が予想以上に大きくなり、購入予定の自律神経解析プログラムを購入することができなくなった。そのプログラムのレンタル代として使用させていただくことも検討している。
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Research Products
(1 results)