2014 Fiscal Year Research-status Report
直感的・潜在的な選好判断に関わる脳内情報処理メカニズムの解明
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26380999
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
武田 裕司 独立行政法人産業技術総合研究所, 自動車ヒューマンファクター研究センター, 研究チーム長 (10357410)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 脳波 / 位相同期 / 選好 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、脳波の低ガンマ帯域におけるチャンネル間位相同期性が直感的な選好の情報処理を反映している可能性について検討することであった。平成26年度は、まず、タイムプレッシャを与えた状況下で写真画像に対する直感的な選好判断を求める実験を行った(実験1)。その結果、「嫌い」と答えた写真画像と比べて「好き」と答えた写真画像に対して低ガンマ帯域におけるチャンネル間位相同期性が高くなることが示された。この結果は予備的研究の結果と一致しており、再現性を確認するものであった。 次に、同じ写真画像をブロック間で繰り返し提示する実験を行った(実験2)。その結果、繰り返しに伴う位相同期性の系統的な変化は認められなかった。また、単純接触効果様の反応バイアス(繰り返し提示された刺激をより「好き」と答えるバイアス)も認められなかった。 先の実験で単純接触効果様の反応バイアスが認められなかったため、単純接触効果が生起しやすいと考えられている無意味図形を刺激として用いた実験を行った(実験3)。ここでは、無意味図形に対する低ガンマ帯域位相同期の基本特性を調べるため、繰り返し提示を行わず、実験1と同様の方法で検討した。その結果、写真画像を用いた実験の結果とは逆に、「好き」と答えた無意味図形と比べて「嫌い」と答えた無意味図形に対して位相同期性が高くなることが示された。さらに、この結果の再現性を確認するために、写真画像を刺激として用いるセッションと無意味図形を刺激として用いるセッションを実験参加者内要因として設定し、低ガンマ帯域の位相同期性を検討した(実験4)。その結果、実験1と実験3の結果が再現され、選好と位相同期性の関係が写真画像と無意味図形で逆転するという結果が得られた。この結果は、本研究開始当初に予想していなかったものであるが、我々の選好メカニズムを知る上で非常に意味のある知見であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は前半期に予備的研究の実験結果の再現性を確認すること、後半期に刺激を繰り返して提示することの影響を検討することを目標としていた。これらの目標に相当する実験を行い、予備的研究の実験結果が再現されることを確認するとともに、繰り返し提示が低ガンマ帯域の位相同期性にほとんど影響しないことを明らかにした。さらに、無意味図形を用いた実験を行い、本研究開始当初に予想していなかった興味深い結果を得ることができた。これらのことから、平成26年度の目標は達成しており、概ね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度も研究計画作成当初の予定通り、単純接触効果やdistractor devaluation効果など、繰り返しによる選好バイアスとそれに関連した脳活動パタン(主に、低ガンマ帯域におけるチャンネル間位相同期性)を明らかにするための実験を行う。平成26年度の研究において、日常的なオブジェクトの写真画像を繰り返し提示した場合に十分な選好バイアスが認められなかったため、今後は無意味図形を用いた実験を中心に実験を推進する予定である。
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Causes of Carryover |
無意味図形を用いた実験において、本研究開始当初に予想していなかった結果が得られたため、実験方法の再検討や文献調査に時間がかかった。このため、予算的には予定よりも実験1回分を積み残した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究開始当初の予定よりも平成27年度に実験を多く実施するために使用する。
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