2016 Fiscal Year Research-status Report
自閉症者における顔認知の補償ストラテジーの学習-分類画像法を用いて-
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26381000
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
永井 聖剛 立命館大学, 総合心理学部, 教授 (00415720)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西崎 友規子 京都工芸繊維大学, グローバルエクセレンス, 講師 (60705945)
金谷 英俊 愛知淑徳大学, 人間情報学部, 助教 (20513039)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 自閉症 / 高自閉傾向者 / 顔認知 |
Outline of Annual Research Achievements |
顔認知ストラテジーを詳細にヴィジアライゼーションするClassification image法の利点を活かし,顔認知ストラテジーの特殊性(額の利用)が様々な顔刺激を使った場合にも認められるのかを確認する。そして,特殊なストラテジーを採用する被験者は,正常なストラテジーを習得することができるのかを明らかを明らかにし,自閉症者の顔認知における障害を低減させるための技術開発を行う。同時に自閉症者そして自閉症ではないが自閉傾向の高い者の顔認知を含めた認知情報処理特性についても実験によって明らかにすることも目指す。このように包括的に自閉症者の認知ストラテジーに迫ることによって学習ストラテジー向上に寄与する知見が得られ,将来的に工学的な学習システムを作成することを念頭に置き,認知心理学と情報工学を専門とする分担者を追加した。 前年度に愛知淑徳大学近辺で実験参加可能な自閉症者が体調不良等で実験ができず,高自閉傾向者と低自閉傾向者との様々な認知情報処理を比較する実験を行い,顔刺激に対する単純接触効果を比較した。今年度立命館大学の新設学部に異動し,自閉症者被験者にアクセスするのが難しく,高自閉傾向者あるいは社会的交流が苦手な者に焦点を当てた研究を継続し,高自閉傾向者が得意ではないと予測される運動課題と顔認知との関連を調べた。実験では赤ん坊顔画像,あるいはレスラー顔画像を提示し,後者で握力発揮値が大きくなることが明らかになった。これは顔画像が示す人物の潜在パワーに応じた自発的な運動筋力調整を反映し,高自閉傾向者ではこのような調整が生じないと予測されたが,自閉傾向の差はみられなかった。他方,自閉傾向と関連する他者配慮傾向の高低と自動車運転姿勢,高社会的運転との関係を調べ,低他者配慮者(高自閉傾向者に相当)では高他者配慮者で見られる収縮姿勢による高社会的運転行動の増加が生じないことを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前々年度,および今年度と2回生じた新大学への異動による実験環境構築の遅れを取り戻し,かつ,情報工学的な応用を念頭に置き,新しい分担者を追加した。また,広範な情報収集,実験計画のさらなる拡充を目指した調査や出張を行い,本研究プロジェクトの目的に関連した新たな視点からの実験を行った。しかしながら,前々年度,前年度では実験協力者となる予定であった自閉症者が実験に参加できなくなったこと,今年度には自閉症被験者へのアクセスが困難であり,高自閉傾向者に焦点を当てた研究を中心として,研究・実験を行っているものの,やや遅れている状態である。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である本年度は,新たな大学への異動を行った。新設校であるため実験環境の構築が遅れ,自閉症被験者へのアクセスも困難であった。よって,これまでに行った実験データの成果発表,そして,研究目的に適い,かつ簡便な実験設備で可能な実験計画に柔軟に切り替えて,研究を実施した。その結果,ある程度の研究発表を行うことができた。このような研究計画の遅れから,研究計画を延長することとし,今年度行った実験を拡充する研究を行い,効率的な研究を推進する予定である。
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Causes of Carryover |
研究年度の3年間のうちに2度の異動を行ったこと,前所属での自閉症者が体調を崩して実験に参加できず,現所属での自閉症被験者へのアクセスが困難であったことから,当初計画していた実験計画の実施が困難となったことが,当該予算の使用が遅れている主要な理由となる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現状に即して柔軟な研究計画を組み,効率的な実験計画の遂行を行い,計画延長となる2017年度には2016年度に行った研究を拡充する方向で,速やかに実験を完了する予定である。また本年度と同様に分担者との議論が研究を適切に完了するために必須であると考え,分担者訪問のための旅費や成果発表のための旅費が多くなる予定である。
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Research Products
(3 results)