2016 Fiscal Year Annual Research Report
Tip-of-the-tongue states and aging
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26381001
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
伊集院 睦雄 県立広島大学, 保健福祉学部(三原キャンパス), 教授 (00250192)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 喉まで出かかっている現象 / 認知加齢 / 語彙数 / シミュレーション / コネクショニスト・モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,「喉まで出かかっている」(TOT:tip-of-the-tongue state)状態が高齢者で生じやすくなるメカニズムに関し,健常成人や病的な喚語困難を呈する症例を対象とする実験的アプローチにより高齢期TOT現象の発現機序と病的な喚語困難との関係を検討する.また,コネクショニスト・モデルを用いたモデル論的アプローチによって,実験的アプローチにより得られた行動データを再現できるか確認する.
最終年度である今年度は,実験的アプローチとして,言語的知識の多寡がTOTの生起に影響するかどうかを再検討するため,健常高齢者を対象としたTOT実験を実施した.対象を語彙数の多い群と少ない群に分け,TOTの生起頻度を比較した結果,語彙の少ない群の方が,語彙の多い群に比べ生起頻度が高かった.前年度に実施した若年健常者の結果と併せて分析した結果,少語彙群の低頻度語刺激条件以外では,言語的知識を統制しても生成されるTOT数に年齢の違いが現れることを示している.つまり,高齢者におけるTOT生起頻度の増加は語彙数の違いでは説明することはできず,明らかに加齢の影響が認められることを示唆するものである.
モデル論的アプローチでは,意味から音韻を計算するコネクショニスト・モデルを構築し,一度学習が終了したモデルの結合強度を減衰させて再学習させることにより高齢者の換語を再現することを試みた.その結果,一般名詞より固有名詞で,高頻度語より低頻度語で,隣接語を多く持つ語より少なく持つ語でエラーが多かった.これらの現象は,高齢者のTOT現象で一般的に認められる傾向と同様であり,行動実験だけでなくシミュレーション実験からも,TOT現象が語彙数の多寡ではなく加齢によるものであることが明らかとなった.
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