2015 Fiscal Year Research-status Report
ルソーにおける孤独の教育的意義の考察―ペトラルカの人文主義哲学を参照枠組として―
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26381006
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
室井 麗子 岩手大学, 教育学部, 准教授 (40552857)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ルソー / 自己の実践 / 孤独 / 教育思想 / P・アド / 自伝 / 人文主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、まず、従来のルソーの教育思想・哲学研究をあらためて整理し、その特徴を明らかにし、そうして、ルソーにおける「孤独」の教育的意義に着目しながら、彼の教育思想を「自己の実践」として捉え直すという本研究の意義と妥当性とを明確化した。思想を体系的に把握するという志向性や学校教育との接続の重視という特徴を持つ従来の教育学研究や教育思想・哲学研究では、ルソーの自己実践を描いた彼の自伝的著作(『告白』、『ルソー、ジャン=ジャックを裁く』、『孤独な散歩者の夢想』など)は、一貫性を持った体系としての教育論には馴染まないことから、あまり重視されてこなかったこと(教育論『エミール』読解のためのサブテキストという位置付けであったこと)を指摘した。その上で、これらの著作が、ルソーの教育思想の肝要を知るうえで重要であることを明示した。 また、ルソーの教育思想を読み直す際の参照枠組みとして本研究で採用している、ペトラルカの人文主義哲学に大きな影響を与えたアウグスティヌスの思想を研究し、人文主義哲学の流れでルソー教育思想を再読するための準備作業をさらに進めた。本研究の理論枠組みであるP・アドの「霊的な訓練」の内実をより精緻に理解するための作業として、昨年に引き続き、アド『古代哲学とは何か Qu'est-ce que la philosophie antique?』の邦訳作業をさらに進めた。 さらに、平成27年度は、ルソーの教育思想が、特に戦後の日本において教育実践の場でどのように受容され具体化されたのかについて、「国民の教育権論」を事例に取り上げ、その特徴と問題点とを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は概ね計画通りに研究を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、本研究の参照枠組みならびに理論枠組みの精緻化をさらに進め、それらをもとに、ルソーの著作の分析をさらに進める。そして、これらの成果を適宜公表したいと考えている。
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Research Products
(3 results)