2017 Fiscal Year Research-status Report
地域構造との関連からみた中世末・近世初期日本の識字率に関する研究
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26381007
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
八鍬 友広 東北大学, 教育学研究科, 教授 (80212273)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | リテラシー / 識字 / 往来物 / 寺子屋 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本における識字の普及過程について、地域社会の在り方と関連させながら、その歴史的な動向を明らかにすることが本研究の目的である。このため、識字にかかわる多様な資料を発掘・収集し、識字の在り様を立体的に復元することに努めている。 本年度においては、以上の目的のため、岩手県、福井県、富山県などを訪問し、県立文書館等を中心に資料の探索をおこなった。また、これとあわせ、明治初期における識字状況と比較する目的で、総務省の統計図書館を訪問し、識字および教育に関係する統計資料の所在状況についても確認した。 これらにより、近世期の読み書き教科書である往来物に関する有益な資料および情報を収集することができた。また、識字の歴史に関係してもっとも有力な史料を所蔵している福井県文書館においては、継続的に資料調査をおこなっているところであるが、同地域において長期にわたり寺子屋教育を営んでいた家に関係する資料を収集することができた。 以上の調査・研究等により、本年度においては、吉川弘文館から『闘いを記憶する百姓たち-江戸時代の裁判学習帳-』という著書を刊行するにいたった。これは、一七世紀前半におこった一揆・争論において作成された訴状が読み書き教材となっていることについて記したものである。近世期における民衆の識字力形成のきわめて多様な在り方を明らかにしたものであり、本年度においては、新たな史料によりこれまでの研究をさらに前進させることができた。 また東北教育哲学教育史学会において講演をおこない、識字の歴史研究と教育史研究の関係についての発表をおこなった。発表内容は、当該学会の機関誌である『教育思想』に掲載され、刊行が予定されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
資料調査においても一定の進展をみており、また、論文・著書などの刊行にも至っていることから、おおむね順調に進展しているといえる。 民衆の識字力について直接知ることのできる歴史資料はきわめて稀であるため、周辺的な資料を含む多様な資料収集が必要となる。今後も、その収集に努めることが必要となる。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度が最終年度となるため、研究の取りまとめが必要となる。現在、日本における読み書きの歴史に関する概要をふまえた、リテラシーの歴史についてまとめることを計画しているところである。年度内に執筆し、来年度中に業績として刊行されることを目標としている。
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Causes of Carryover |
次年度(平成30年度)が、本研究全体の最終年度となるため、これまでよりも多くの研究費を必要とすることが予想される。このため、本年度においては、できるかぎり節約に努めたものである。次年度においては、研究のまとめとして著書の執筆をおこなう予定であり、このため、文献の購入、および確認のための調査旅費等が必要となることが見込まれる。これらの事業に対し、適切に予算を執行する予定である。
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