2014 Fiscal Year Research-status Report
社会的構成主義と思想史的方法論による「真正の学び」論の再検討
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26381014
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
古屋 恵太 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (50361738)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 近代教育思想批判 / ジョン・デューイ |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度に行った研究は以下の三つに分けられる。 1.真正性(authenticity)概念の研究を代表する著作(ライオネル・トリリング『誠実とほんもの』、チャールズ・テイラー『<ほんもの>という倫理』)について検討を行った。また、これらを導きとした哲学と教育学のそれぞれにおける真正性研究書を収集し、近年の研究状況を概観することに努めた。これについては、金沢大学で研究報告を行った。 2.現代教育学において、真正性がどのような文脈で求められ、論じられているのかを、戦後教育学批判、近代教育思想批判との関わりで考察し、論じた。その成果が、古屋恵太「近代教育思想批判後の「新しい教育学」の原理」(山本睦・前田晶子・古屋恵太編『教師を支える研修読本―就学前教育から教員養成まで―』ナカニシヤ出版、2014年。)である。これにより、近代教育、戦後教育学の文脈ではなく、それらに対する批判的文脈で真正の学びを位置づけることができることが明らかとなった。 3.真正性を近代的概念としてではなく、近代批判的、ポストモダン的概念として論じることは、真正の学び論のルーツであるジョン・デューイと近代・近代化の関係を再検討する必要があることを意味する。そこで、比較思想史的手法を用いて、20世紀初頭の中国の近代化に対するデューイの論考を考察することで、この課題に取り組んだ。その成果が、古屋恵太「20世紀初頭の中国における二人のデューイ―西洋近代化の象徴、および/それとも、それを相対化する媒体―」(教育思想史学会『近代教育フォーラム』第23号、2014年。)である。この論文は、デューイが近代化の象徴でありつつも、中国が西洋近代化を批判する思想を持っていることを評価した思想家であったことを論じたものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
真正性に関する文献資料収集は、かなりの程度、達成することができた。しかし、平成26年度は、研究課題に関する基礎的研究を行うにとどまり、学びにおける真正性の発現に関する分析を行うことができなかった。 原因は圧倒的な時間の不足である。研究・教育以外の大学運営・学会運営業務に時間を奪われ、研究に専念できる時間が非常に限られていることが達成度が「やや遅れている」原因だと考えられる。 学びにおける真正性の発現をデューイの思想、現代社会的構成主義の知見から分析するという課題そのものは明確であるので、研究に専念できる時間を確保するための手段を探したい。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、研究計画に従い、デューイの『いかにわれわれは思考するか』や『経験としてのアート』等をテクスト・クリティークの対象として、子どもと主題の連続的相互作用のメカニズム、すなわち、学びにおける真正性の発現過程を分析する予定である。 また、夏季または秋季に海外出張期間を確保し、先端の真正性研究に関する資料収集、デューイのテクストの思想史的研究を可能とする歴史的資料の収集を行う予定である。
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Causes of Carryover |
文房具等の消耗品の購入や印刷費を比較的抑えることができたため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
手持ちの文房具等の消費に伴い、文房具等の購入に使用する予定である。
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