2017 Fiscal Year Annual Research Report
Exploration of the Thoughts of Authenticity in Education from the Viewpoints of Social Constructivism and the History of Ideas in Education
Project/Area Number |
26381014
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
古屋 恵太 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (50361738)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ジョン・デューイ / 真正性 / 社会的構成主義 / 教育思想史 / 真正の学び / 探求 / 誠実 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、「真正の学び」の思想的ルーツとされているジョン・デューイの教育思想を、科学的探求と美的探求という二つの観点から考察した。前年度までに行った研究によれば、現代の社会的構成主義においては、「真正の学び」はグローバル化した社会に適応できる学校での教育内容や、そのための学力の向上を実現する合理的手段(例えば「協同」という活動)を意味する傾向が強い。また、思想史的に革新主義期を考察しても、やはり善き習慣の確立のための合理的手段としてデューイを含む進歩主義教育思想を摂取する傾向が強いことが示されていた。 しかし、デューイの科学的探求を「真正性」の観点から再考察すると明らかになるのは、デューイに「真正性」にあたるものがあるとすれば、それは「誠実」(sincerity)であるということである。デューイは科学的探求が「開かれた心」のような倫理的態度と不可分であると論じていた。ここでの「誠実」とは、自己の内面に誠実であることとも、実社会に忠実であることとも異なっている。それは、ある特定の科学的探求の「主題」の展開そのものに誠実であるということを意味する。探求の中心は「主題」にあり、合理的統制を行う主体としての個人にも、個人に合理的統制を加える社会にもない。 「誠実」は美的探求でも同様に要請されている。美的探求で特に注目されるのは、探求が人類のこれまでの問題解決を、実演を通して「劇的に表現すること」と見なされていることである。そして、この劇的表現には想像される他者の反応を考慮に入れることが含まれている。ここにも、個人の内面の独自性か、他者や社会の再現か、といった二項対立を超えたデューイの発想を見ることができる。以上の研究の成果は、古屋恵太編著『教育の哲学・歴史』(学文社、2017年)の第7章「子どもにどうやって教えるのか」と、本研究の成果を冊子化した研究成果報告書にまとめた。
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