2014 Fiscal Year Research-status Report
<レジリアントな個>の育成とアメリカ実践哲学:哲学と教育のクロスカレント研究
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26381026
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
齋藤 直子 京都大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (20334253)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | レジリアントな個 / アメリカ実践哲学 / 哲学と教育のクロスカレント領域 / 哲学のサブジェクト転換 / 危機からの再生の哲学 / 国際研究者交流(アメリカ、ヨーロッパ) / 哲学と教育の学際的対話 / 基礎づけなき安全 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、グローバルなリスク社会を生き抜くための強靭な思考力を通じて不安と不確実性を「基礎づけなき安全」に転換する<レジリアントな個>の育成のための哲学を提示することを目指す。そのために、アメリカ哲学がもつ「危機からの再生の哲学」としての革新的意義を、実践性、学際性、国際性の諸側面から解明し、市民性教育や哲学教育における意義を示す。研究手法として、哲学と教育の学際的・国際的対話を軸に、他なるものに向けて自己と自文化の超越を促す哲学と教育のクロスカレント新領域を開拓することを目標とする。この目的と手法に照らして平成26年度は、日本連携研究者および海外共同研究者との連携のもと、下記の業績を達成した。 (1)前年度科研費の成果であるHelsinki Collegium for Advanced Studies, University of Helsinki(フィンランド)の研究経費(40,000ユーロ)つき招聘在外研究を、当科研費研究活動を通じて新たに発展させることで、アメリカ哲学の国際ネットワークの飛躍的展が生まれた。北欧プラグマティズムネットワーク研究者との新たな連携、アメリカ哲学、ポスト構造主義、京都学派の哲学研究者の対話のための国際会議の開催。(2) 国際教育哲学会2016年次大会学会のプログラム実行委員長選出、アメリカ哲学促進学会2016年年次大会プログラム共同実行委員長選出。(3)英語論文(査読有)4本、共著(英語/査読有)3本、共著(日本語)2本出版。(4)国際学会発表(英語/審査受理)3件。(5)日本語単著『アメリカ哲学の夜明け』(法政大学出版局)原稿の推進。(6)日本初のアメリカ哲学学会を立ち上げ、アメリカ哲学の日本内ネットワーク形成促進。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
(1)平成26年度後半、研究経費つき(40,000ユーロ)ヘルシンキ大学在外研究(客員研究員)との相乗効果として、本科研費研究活動を通じて、交付申請時には予測していなかった国際研究者交流が飛躍的に進展し、北欧のアメリカ哲学研究者を巻き込む国際的なネットワーク形成が促進された。このネットワーク形成は、当初予測されなかった形で、アメリカ哲学を非アメリカ的視座からグローバル化の時代に問い直すことにつながり、アメリカ哲学をめぐる中心ー周縁構造の転換という新たな関連研究テーマが生まれることになった。またその成果を海外共同研究者との英語の共編著として出版する計画が新たに進んでいる。(2)アメリカ教育哲学会のパネルでは、当該課題研究に関わる研究テーマについて、アメリカ教育哲学会、イギリス教育哲学会理事の研究者らと共同発表を行い、その成果が、2016年8月プログラム実行委員長を務める国際教育哲学会につなげられることになった。(3)イギリス教育哲学会でのベルギー、イギリスの研究者との共同パネル発表の成果が、2016年の同学会の学術誌であるJournal of Philosophy of Educationの特集号に出版される可能性が開けた(プロポーザル作成中)。(4)日本語単著については原稿の三分の二を書き上げることができ、平成27年度出版のめどがたった。(5)上記国際研究者交流を通じ、また平成26年度の研究成果が国際的に認められ、平成27年度前半(4月、5月、6月、7月)にフィンランド、イギリス、アイルランドで招待講演・講義が合計7件(英語)が決定し、研究成果の知名度を国際的に高める可能性が開けた。 以上の理由により、交付申請の目的であるアメリカ哲学をめぐる学際的・国際的対話を通じた「哲学と教育のクロスカレント新領域」が国際的な場面で当初計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)2016年8月にイタリアで開催される国際教育哲学会においてプログラム実行委員長を務める機会を最大限に生かし、当該研究の促進につながる国際研究者交流、外国研究者との共同パネル発表を行い、対話の中で哲学をしながら、哲学と教育のクロスカレント領域開発を促進する。 (2)平成27年度前半に日本語編著を完成させ、後半は「レジリアントな個の育成」に関わる英語単著の執筆を中心に推進する。 (3) 2016年8月までヘルシンキ大学在外研究の利点を生かし、外国での招待講義、講演、北欧のアメリカ哲学研究者を含む欧米の国際研究者交流を促進し、その中で本研究の国際的意義を活性化させてゆく。その成果を上記、英語単著、英語共編著、国際学術誌特集号編集に取り入れていく。 (4)海外共同研究者の単著の邦訳書『過剰な思考』(法政大学出版局プロポーザル審査受理済み)の出版に向けて原稿を完成させる。同じく同研究者の著作と本課題研究に関わる編著『哲学のサブジェクト転換』(東京大学出版会プロポーザル審査受理済み)の出版に向けて執筆・編集作業を推進する。 (5)平成26年度の国際研究者交流の成果として新たに生み出された「アメリカ哲学をめぐる中心ー周縁構造の転換」という新たな関連研究主題について、本課題研究と関連させつつ発展させてゆく。
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Causes of Carryover |
(1) 旅程の最終日が平成27年度4月1日にかかり、会計手続き上精算払いとする時、4月1日帰着分は平成27年度として処理することになるため。 (2) 平成26年度後半、ヘルシンキ大学にて在外研究を行ったため、当初見積もっていたよりも海外旅費の支出が少なくなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
(1) 旅費の最終日が平成27年度4月にかかった、平成26年度3月イギリス教育哲学会参加のための日当、宿泊費(159,544円)および帰途交通費(3,847円)に充当(合計:163,391円)。 (2)平成27年度、すでに招待講義が決定しており、全額の旅費が招聘元から提供されない学会参加に使用する。 (3) 海外共同研究との課題研究についての打ち合わせと英語編著および国際学術誌特集号プロポーザル作成打ち合わせのために使用。
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Research Products
(13 results)