2014 Fiscal Year Research-status Report
19世紀後半イギリスにおける「浮浪児」の処遇と教育
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26381031
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
三時 眞貴子 広島大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (90335711)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 教育史 / イギリス史 / 社会福祉 / 児童福祉 / 子ども史 / 児童虐待 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、19世紀後半のイギリスにおける「浮浪児」の教育実態を、浮浪児を収容した寄宿制インダストリアル・スクールに残された入学記録、退校記録、各種委員会の議事録等、これまで使われたことのない一次史料を用いて明らかにするものである。当時の「浮浪児」は法的には「犯罪者」として逮捕される一方で、「適切な親のいない」存在として保護されるべき対象としても捉えられていた。この二つのまなざしは、彼らに対する処遇にどのような影響を与えたのか、当時の「浮浪児」の教育に関わった都市民、地方当局、国家は「浮浪児」をどのようにして社会に包摂しようとしたのか、本研究はこれらの課題に応えることを目的としたものである。 研究対象であるマンチェスタ認定インダストリアル・スクールは1846年にマンチェスタの都市エリートによってヴォランタリに設立されたが、1858年に国庫補助金を受給する認定インダストリアル・スクールとなった。1871年には収容人数の増加を理由に分校であるバーンズ・ホームを、1877年には女子のための学校をセイルに設立した。 本年度はまず、マンチェスタ認定インダストリアル・スクールで行われていた職業教育と一般の労働者階級子弟が基礎学校で受けていた職業に関する教育の違いについて王立調査委員会の議事録をもとに分析し、6月の中四国歴史学会で報告した。さらに予定通り、本校・バーンズホーム・セイル校の史料収集のためイギリスに調査に行った。その史料に記載されていた勅任視学官による試験の結果をもとに男子と女子、それぞれの学業成績の調査を行った。その結果は教育史学会で報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した通り、本年度すべき史料調査・報告を行ったからである。 ただ、論文投稿はできなかった(論文自体の執筆は進めている)が、その代わり来年度予定していた報告を今年度に行ったので、総合的に見て、おおむね順調だと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は本校の運営委員会の議事録と、学務委員会のインダストリアル・スクール委員会の議事録を照らし合わせつつ、マンチェスタで行われていた浮浪児の教育・処遇の全体構造を明らかにするとともに、そこで何が問題視されていたのかを検討する。 この研究を通して社会福祉・児童福祉の領域で語られることの多い同校の活動を「教育史」の文脈の中に位置づける。 また作成途中の論文を投稿するとともに、子どものの教育と福祉に関する国内セミナーを開催する。
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Research Products
(2 results)