2016 Fiscal Year Annual Research Report
Care and Education for vagrant children in the late nineteenth century England
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26381031
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
三時 眞貴子 広島大学, 教育学研究科, 准教授 (90335711)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 教育史 / イギリス史 / 浮浪児 / 子ども / 労働の教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、19世紀後半のイギリスにおける「浮浪児」の教育実態を、浮浪児を収容した寄宿制インダストリアル・スクールに残された入学記録、退校記録、各種委員会の議事録等、これまで使われたことのない一次史料を用いて明らかにするものである。当時の「浮浪児」は法的には「犯罪者」として逮捕される一方で、「適切な親のいない」存在として保護されるべき対象としても捉えられていた。この二つのまなざしは、彼らに対する処遇にどのような影響を与えたのか、当時の「浮浪児」の教育に関わった都市民、地方当局、国家は「浮浪児」をどのようにして社会に包摂しようとしたのか、本研究はこれらの課題に応えることを目的とした。 その結果、次のことが明らかとなった。MCISの目的は、保護者がいても適切な保護を得られていない子どもを社会で役立つ人材に育てること(「改善」)であり、そのことは設立当初から一九世紀末に至るまで強く意識されていた。子どもたちを「労働」に従事させることで「改善」を行うという方法は、擬似的な職業「体験」や「教室」での職業技術の教授とは異なり、実際に親方のもとで「教育的価値」のある訓練を受け、製品を作り販売することであった。この点はこうした徒弟修業的な「労働の訓練/教育」を軽視したニューカースルの事例と比較すると、MCISの特徴ともいえるだろう。 本来であれば、「家庭」や「現場」の責任で行うはずの「労働の教育」を、「適切な保護を得られない子ども」に限って行政が行うというこのシステムは、「社会の一員に育てること」に誰が責任を負うのか、という問題に対して国家が示した一つの解決策でもあった。法律が定められ国家政策の一環として開始するこのシステムはしかし、まさに地方の問題であった。19世紀後半のマンチェスタでは「浮浪児の処遇と教育」という地方社会の課題にさまざまな立場の人々が「複合体」となって取り組んでいた。
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Research Products
(1 results)