2014 Fiscal Year Research-status Report
ヴィルヘルム・フォン・フンボルトの「教養」理念形成と「ロマンチックラブ」
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26381033
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
櫻井 佳樹 香川大学, 教育学部, 教授 (80187096)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 教養 / フンボルト / ロマンチックラブ / 近代家族 / 18世紀 / ドイツ教育思想 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ドイツにおいて歴史的に先駆的であった「ロマンチックラブ」に基づく恋愛結婚形態の一事例としてヴィルヘルム・フォン・フンボルト(Wilhelm von Humboldt 1767-1835)と妻カロリーネとの関係を取り上げることを通して、カロリーネとの関係がフンボルトの「教養」理念にいかなる影響を与えたかを解明することを目的としている。そのために、平成26年度においては18世紀ドイツにおける「恋愛結婚」のもつ意味について明らかにすることを主たる課題とした。当人同士による自由な交際と結婚は近代の現象である。結婚は恋愛を基礎とすべきであるが、結婚に至らない危険を伴うものでもある。「ロマンチックラブ」概念を明らかにするとともに、フンボルト夫妻を事例としてドイツにおける実態について考察した。その際妻カロリ-ネの生い立ちや人物像を明らかにするとともに、なぜどのようにフンボルトと出会い交際したのか、そして最終的に結婚するに至ったのか、結婚に際して障害はなかったのか等、カロリーネの視点から考察した。 そのために必要な資料をドイツ連邦共和国に滞在し収集した。ベルリンの国立ベルリン図書館ではクルックホーン(1966)『18世紀並びにドイツロマン主義文学における愛の把握』などの文献複写を行った。またカロリーナの実家であり、結婚後二人が暮らしたヘットシュテット近郊のフンボルト城(現マンスフェルド博物館)を訪れ資料収集を行った。これらにより、文献読解がより緻密になった。帰国後は、その他国内で収集した文献共々読解を続けている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の課題は、18世紀ドイツにおける「恋愛結婚」のもつ意味について明らかにすることであった。そのため「ロマンチックラブ」概念全般を明らかにするとともに、恋愛と結婚がいかに歴史的に結びついて形成されたのか、その社会史的、思想史的意味の解明を行う必要が生じた。そのためには、哲学、宗教学、文学、社会学、家族史研究など教育学以外の様々な学問分野の文献研究が必要となった。またドイツ以外にもイギリス、アメリカ、フランスそして日本におけるこの概念や制度的産物がいかに生じ発展してきたかについての比較研究も必要となってきた。この問題の全体的な動向の中で、ドイツ近代の一事例としてのフンボルト夫妻を評価するためである。幾分迂遠な道を余儀なくされていることは否めないが、ドイツにおける資料集の実施・読解と共に研究上必要なものとして、概ね順調に進展していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度に着手した研究テーマについては、引き続き研究を遂行する。平成27年度の課題は、フンボルトとカロリーネの二人の関係に焦点を当て、愛についての理論と実践がいかにフンボルトの「教養」理念形成に寄与したかを解明することにある。この点については、両者の相互関係としての「恋愛」がいかに「結婚」へと至ったのか、平成26年度に着手した「ロマンチックラブ」「恋愛結婚」「近代家族」等の研究成果と関連づけながら、ドイツ近代における事例研究として考察していく。その成果をまとめ、平成27年度中国四国教育学会(岡山大学)にて発表する予定である。
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Causes of Carryover |
発注した図書(洋書)が、品切れであったたため、予算を計画通り使用することができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
余った予算は次年度に繰り越して、図書費として使用する。
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Research Products
(3 results)