2016 Fiscal Year Annual Research Report
The Influence of Secular Moral Education and Epistemology on the Educational Institutions of the Latter Period of the French Third Republic
Project/Area Number |
26381037
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Research Institution | Shokei Gakuin College |
Principal Investigator |
太田 健児 尚絅学院大学, 総合人間科学部, 教授 (00331281)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | エピステモロジー / 統一学校運動 / ジャン・ゼイ / ライシテ / 道徳教育論 / デュルケーム / フランス第三共和制 |
Outline of Annual Research Achievements |
フランス第三共和制「後期」の教育制度の変遷は、コンパニョン、統一学校、ジャン・ゼイ改革とその頓挫、第二次世界大戦後の「ランジュバン=ワロン改革案」(1947年)というモノトーン的な史観に基づいたものだった。大筋では正しいが、第三共和制「前期」「中期」の懸案事項だった「モラルライック」の推移、ライックな道徳教育論(世俗的道徳教育論)の根底にあったモラルサイエンスの科学性の教育分野における議論の詳細などが「後期」でどうなっていたのかという研究がこれまでなかった。そこで本研究は、これまでの研究成果に基づき(科研費,基盤研究C,課題番号23531019)、上記の課題解明に取り組んだ。まず第三共和制「前期」のモラルライックは「二つの系譜」が存在した点を本研究では解明したが、しかし、それらが「後期」に至り、教育現場にどう影響を与えたのかが未解明であった。実は「後期」に至っても、モラルライックは教育現場に定着していたとは言い難い事実が散見されるのである。キリスト教道徳(「神に対する義務」)が教育内容に復活したり、退けられたりと、その紆余曲折ぶりは激しい。それゆえ「後期」のモラルライックと「政争」との密着度合いのさらなる解明が今後の課題として残った。もう一つ、フランス教育思想史の底流にあるエピステモロジーの重要性が今回の研究では解明された。これは単なる思想史上の出来事ではなく、フランスの全ての分野の根底にあるいわばDNAとさえ言い得るものである。そこでの「科学性」は実は人文系学問でも既に受容しており、「実証」概念とともに文系・理系共有のコンセプトであった。つまり文系・理系はこの時点ですでに棲み分け原理を確立しており、人文系学問にとっての敵は「一般教養概念」であったという新しい研究課題も抽出された。
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Research Products
(1 results)