2014 Fiscal Year Research-status Report
近世日本幕藩教育体制の創出過程における漢学教育の役割―孔子廟・釈奠の制度化を軸に
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26381040
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Research Institution | Chiba University of Commerce |
Principal Investigator |
朱 全安 千葉商科大学, 政策情報学部, 教授 (20266183)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 教育史 / 文化史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、幕府・諸藩の教育体制が未だ確立される以前、江戸前期より漢学教育が営まれてきた主要な地域のうち、特に早期に儒学・孔子廟・釈奠の研究が勃興した肥前(佐賀藩・多久邑・小城藩)の関係史料の調査収集を行い、幕藩教育体制創出過程における漢学教育の役割について考察を進め、学術論文・学会発表等を通じて、研究成果を国内外において発信した。 本年度の研究により、以下の史実を実証的に跡付けることができた。 佐賀藩では、第二代藩主鍋島光茂・第三代藩主鍋島綱茂が儒学に関心を示していた。その環境の下、第二代藩主光茂が佐賀城二の丸に鬼丸聖堂(孔子廟)を建立し、儒学者武富廉斎が大財聖堂(孔子廟)建立した。 多久邑では、第四代邑主多久茂文の主導の下、元禄年間に儒学を教える学校が創設され、宝永五年に多久聖廟(孔子廟)が建立され、釈菜(釈奠)が行われた。 小城藩では、第二代藩主鍋島直能の主導により、漢学教育に力を入れ、藩士に儒学の知識と中国の言語を学ばせ、漢学教育を行っていた。下級藩士の子である下川三省は、藩主鍋島直能の命令と援護の下、中国知識人朱舜水について生きた漢語と儒学を学び、やがて藩儒に登用され、小城藩漢学教育の基礎を築いた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画に基づき、本年度に予定された現地調査を実施し、関係史料を収集し、幕藩教育体制創出過程における漢学教育の役割について考察を進め、学術論文・学会発表等を通じて、研究成果を国内外において発信した。 したがって、江戸前期の幕藩教育草創期に着目し、当時の日本の政治的・社会的・文化的な環境の中で、為政者が如何なる目的・方法をもって孔子廟・釈奠を自ら主導した漢学教育機関に採り入れたのかを考究し、幕藩教育体制の創出過程における漢学教育の役割を解明するという本研究の目的の達成は、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究を通して得られた研究成果を基礎として、江戸前期の主要な漢学教育機関の漢学教育・孔子廟・釈奠関係史料の調査収集を更に進めると同時に、幕藩教育体制創出過程における漢学教育の役割について考察を更に進め、逐次研究成果を社会・国民に伝達する。 具体的には、国内外の資料館・図書館等を訪問し、江戸前期の漢学教育機関における儒学研究、教育実践、孔子廟造営、釈奠実施に関する一次史料の調査し、同時に、広く日中両国の漢学教育に関する文献を収集・分析し、学術論文・学会発表等を通じて、研究成果を国内外に発信する。
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Research Products
(4 results)