2016 Fiscal Year Research-status Report
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26381057
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Research Institution | Yamagata Prefectural Yonezawa University of Nutrition Sciences |
Principal Investigator |
安部 貴洋 山形県立米沢栄養大学, 健康栄養学部, 准教授 (50530143)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 国分一太郎 / 生活綴方 / 北方性教育運動 / 現実探求 / メディア |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、予定していた「現代における国分一太郎の生活綴方の可能性と限界」を考察し、明らかにした。さらに、平成26年度、平成27年度に明らかにした国分の生活綴方形成の問題を北方性教育運動との関係で捉えている。 まず、現代における国分の生活綴方の可能性と限界を考察した。このために現代との関係で生活綴方を捉えている先行研究を検討した。その結果の一部は「図書案内」としてだが福島県作文の会機関誌『底流』(2016年夏号)に発表した。また、この問題に関しては1985年までの限られた範囲ではあるが2014年の『「教育」と「文学」の研究』(第3号)にすでに発表している。国分は、1970年代以降の生活の変化を捉え、生活綴方ではなく、人間綴方を提唱している。人間綴方は、現実や生活を前提とするのではなく、現実や生活を構築するための人間の情動や感情を前提にする。この点、生活綴方に関する現在の論考と重なる。だが現在の論考と比較するとき、国分は現実や生活を十分に捉えきっているとはいえない。この点を明らかにした。 また平成26年度、平成27年度に考察した現実探求へと向かう国分の姿勢を北方性教育運動との関係で考察した。国分の現実へと向かう姿勢は、幼少期における国分と自然、他者との関係を前提に成立している。そして、この点が北方性教育運動と国分を結びつける要因の一つともなっている。また、北方性教育運動に関わる過程で生じた国分の生活綴方の変化を示す点でもある。この問題がこれまでの先行研究では十分に論じられていないことを「第10回国分一太郎『教育』と『文学』研究会・学習会」(2016年11月、東京)で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、言語による現実探求として再評価されつつある国分一太郎の生活綴方を、国分の生活綴方の形成過程、特に幼少期に着目することで現実探求としての生活綴方の諸条件を明確にすることにある。 この目的に対して平成26年度は国分の幼少期における言語のあり方を明らかにした。特に学校と村における言語の相違等を国分の著作を中心に考察した。平成27年度は、平成26年度の考察対象の範囲をエッセイ等の文献にまで広げ検討した。その結果明らかになったのは、国分の生活綴方が幼少期における自然、他者との関わりに大きな影響を受けていることである。現実へと向かう国分の姿勢は、この時期に形成されている。この考察の結果は、限定された範囲ではあるが、すでに発表済みである(第10回国分一太郎「教育」と「文学」研究会、講演「生活の風が吹きはじめる場所―母デンと生活綴方」)。この問題は平成29年度も引き続き検討し論文としてまとめる。 また平成28年度は、現代における国分の生活綴方の可能性と限界を考察するために国分の生活綴方を現実探求として捉える論考等を検討した。その結果明らかになったのは、国分の時代と現代では「現実」「生活」が大きく異なるということであった。その結果の一部は「図書案内」としてだが福島県作文の会機関誌『底流』(2016年夏号)に発表した。この問題に関連して、1970年代以降国分は人間綴方を提唱する。国分の人間綴方に関しては、『「教育」と「文学」の研究』(第3号、2014年)において発表済みである。国分の人間綴方は1970年代以降の「現実」「生活」に対応するものとなっているが、国分は1985年に没しているため十分な考察がなされていない。この点を明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、平成28年度に考察した現実探求へと向かう国分の姿勢と北方性教育運動との関わりを論文としてまとめる。この考察は、これまで十分に論じられてこなかった国分と北方性教育運動との関わりを明らかにするとともに、本研究の目的である現実探求としての国分の生活綴方を北方性教育運動との関わりなかでより明確にすることになる。 この目的のために平成29年度は、山形県立図書館、国分一太郎資料収蔵室において適宜資料収集を行う。また、山形県東根市と東京で行われる「国分一太郎『教育』と『文学』研究会」へ参加する。
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Causes of Carryover |
参加を予定していた研究会の内容が、本研究と大きく異なっていたため参加をとりやめた。また、購入を予定していた書籍を購入する必要がなくなったことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究の延長による旅費、追加の研究と論文をまとめるための書籍購入にあてる。
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