2016 Fiscal Year Research-status Report
日本型インクルーシブ教育システムの融合的創成とその国際的意義に関する総合的研究
Project/Area Number |
26381063
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
岡 典子 筑波大学, 人間系, 教授 (20315021)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 満紀男 福山市立大学, 教育学部, 教授 (80000280)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | インクルーシブ教育 / ソーシャル・インクルージョン / 当事者主義 / IL運動 / 理念と現実の相克 |
Outline of Annual Research Achievements |
インクルーシブ教育は、障害、出自、文化的背景等を含め、人間がもつあらゆる差異を尊重し、差異に起因する差別・排除を克服しようとする教育改革、社会改革である。インクルーシブ教育は、学校教育の課題はもとより、今日の国際社会が抱える種々の対立や摩擦を克服する手段として、さらにはすべての人の平等な社会参加という理想を具現する画期として、およそ4半世紀にわたり展開されていた。 本研究は、従来のインクルーシブ教育が高邁な理念とは裏腹にさまざまな矛盾と困難を内包してきた事実に着眼したうえで、その矛盾と困難を乗り越えるインクルーシブ教育とはいかにあり得るのか、とりわけ従来の典型モデルであった欧米的理念・システムとは異なる新たな可能性として、日本モデル・インクルーシブ教育を提起しようとするものである。 平成28年度は、最終年度を翌年に控え、改めて研究全体の構造を再整理するとともに、申請時点では構想外であったいくつかの派生的・周辺的課題にも着目し、検討作業を行った。 現段階で、「日本モデル」が内包すべき要素の抽出をほぼ完了し(研究2)、最終的な提案としての「日本モデル」の原案作成に着手している(研究3)。さらに、付加的な作業課題として、1.障害当事者運動とインクルーシブ教育との理念的・方法論的連続性・非連続性の検討、2.インクルーシブ教育の進展によって引き起こされるマイノリティ間の利害対立とその実態(派生的・周辺的課題)についても、分析を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3年目が3経過した現時点において、申請時の研究計画に照らしてほぼ予定どおりに進展している。さらに、研究の展開過程において、申請段階では着目していなかったいくつかの派生的・発展的課題についても、一部、作業の対象として加えたことで、より複層的な研究成果を導き得ると考えている。予定外の作業課題が加わったことにより、当初から計画していた検討内容について、作業ペースに若干の遅れが生じてはいるものの、最終年度に向けて支障となるレベルではない。 以上の理由から、本研究はおおむね順調に進展していると判断する。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究の方向性及び具体的な方法に関する大幅な変更は必要ないと考えている。次年度は、これまでの研究経過に照らしつつ、大枠としては申請時の研究計画に沿って最終的なまとめを行う予定である。
|
Causes of Carryover |
平成28年度については、当初、資料収集のため複数回の海外調査を計画していたが、予定していた資料・情報の一部分を郵送、インターネット等他の代替手段によって効率化を図り、安価に入手できたため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度においては、不足分のデータ収集を目的とする海外渡航調査、最終的な成果に関する海外研究協力者・関係者との意見交換、情報公開等のため、複数回の海外渡航が不可欠となる。さらに、平成28年度においては、新たな研究視点も加わったことから、そうした内容に関連する研究資料の購入も必要となる。また、最終成果の提案に向けて、データ整理等の作業を依頼するための謝金も必要になると思われる。次年度使用額については、こうした目的を中心に使用する予定である。
|
Research Products
(3 results)