2015 Fiscal Year Research-status Report
日本的人材育成システムにおける公的職業訓練の展開と職業能力開発に関する実証的研究
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26381084
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Research Institution | Fukuoka University of Education |
Principal Investigator |
永田 萬享 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (70155935)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 公共職業訓練 / 技能レベル / 一人前 / 計画的なOJT / 技能資格 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、わが国における人材育成システムの特質を公共職業訓練の具体的な展開過程を通して、明らかにすることを研究目的とするものであり、地域性を反映する人材育成のあり方に注目して、中央部(大都市圏)と地方(九州、東北)に分けた上で、2年目にあたる今年度は引き続き九州地区をフィールドにして公共職業訓練校修了生と企業に対するアンケート調査を行い、さらには企業インタビュー調査を行った。同時に九州以外にも宮城、岩手、福島の各県における公共職業訓練の展開過程および東日本大震災との関わりのなかで、人材育成のあり方に関して調査研究を行い、以下の研究成果を挙げた。 第1に、訓練校修了生の多くは訓練校で学んだ知識、技能を活かしている。一人前になるために必要な年数は企業規模、生産方法、企業内の分業によっても異なるが、4~5年が中心である。 第2に、他方で、訓練校修了生が高卒、大卒、高専卒など他の新入社員と比べて優れていること、不足していることはどんなことであろうか。優れていることは「基礎力」が圧倒的に高い。次いで、「仕事の理解力」「仕事への姿勢、意欲」である。これらは業種、職種を問わない。 不足していることについては「コミュニケーション力」である。しかし、この点については必ずしも訓練校修了生のみに当てはまるものではなく、今日の若者一般に共通する傾向が強い。 第3に、訓練校修了生が仕事に対する姿勢、意欲が高いことは、宮城県のポリテクセンターが行った事業主、事業主団体調査からも訓練校修了生の仕事への関心、やる気の高さが指摘されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年目の研究計画にそって、佐賀、長崎と東北地方の岩手、宮城における公共職業訓練の展開過程について、予定通り順調に調査研究をこなしてきた。2年目は公共職業訓練の総体を明らかにするために訓練校修了生と企業に対するアンケート調査、さらには企業のインタビュー調査を実施した。同時に、職業能力開発業務を所轄する各県庁担当部局そして職業能力開発校の担当者に対してインテンシヴな聴き取り調査とともに、資料の収集を行うことができた。インタビューによる聴き取り調査のテープ起こしもほぼ終わり、期待していた関連資料を収集することができており、当初の研究計画は概ね達成したと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度に佐賀県、長崎県、さらに岩手、宮城の東北地方の対象とした公共職業訓練について、各自治体の担当部局および高等技術専門校の調査を順調にこなしてきた。続く平成28年度においても、基本的に前年度を踏まえて、インタビューによる聴き取り調査を行うとともに、資料の収集を行うこととする。調査地域としては引き続き宮城県、岩手県を取り上げるが、その際、製造業一般ではなく、調査対象は建設関連職種に限定しつつも認定職業訓練にも拡げて東日本大震災の復興計画と職業訓練・人材育成の関わり方についての調査分析を行うことにしたい。
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Causes of Carryover |
消耗品の購入の際、見込額より安く購入できたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度のテープ起こしの経費に充てる。
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