2014 Fiscal Year Research-status Report
教職大学院設置過程における実務家教員と学生募集定員のガバナンス分析
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26381088
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
村山 詩帆 佐賀大学, 全学教育機構, 准教授 (30380786)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丸山 和昭 福島大学, 総合教育研究センター, 准教授 (20582886)
梶原 郁郎 愛媛大学, 教育学部, 准教授 (30390016)
渡部 芳栄 岩手県立大学, 高等教育推進センター, 准教授 (60508076)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 専門職学位課程 / 教職大学院 / ガバナンス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、教職大学院を成立させる基礎的な前提となる実務家教員と現職教員学生の需要と供給をめぐるポリティクスに注目し、それらの需給バランスに影響力をおよぼしうる地方自治体、教授・学習行為を組織化する大学の行動から、教職大学院の新設や拡充の過程に生じるガバナンスの変容を予測するものである。 期間内に実施する調査研究として、 (1)教育委員会を対象とする調査データを用いた教職大学院への教員供給能力の分析、(2)大学の学長または研究科長を対象とした調査データによる教育委員会への期待の分析、(3)各種統計資料からのデータベース構築と地域特性、将来需要推計の実施、(4)実務経験のない大学院学生、現職教員学生による学習のナラティブ(物語)の収集と分析の4つを計画している。 今年度は、専門職学位課程における教職大学院構想の附置を意識しながら、ステークホルダー・ガバナンスを通した教職大学院における教育の「質保証」を可能ならしめる諸条件について、組織論、学習科学にもとづく検討を行った。その理論的な検討の結果により、(1)実務家教員、現職教員学生を教職大学院に供給する教育委員会による教員人事管理、(2)大学における教職大学院設置に関する検討状況、実務家教員、現職教員学生の受入れ状況、教授・学修上の期待と利点、実務家教員の受入れに関する調整などを明らかにするための質問紙調査を設計し、実査している。調査対象は、すべての都道府県教育委員会、教育局・教育事務所、政令指定都市および中核市の教育委員会、教育学研究科や教職大学院、小学校教諭免許を取得できる学部、教育学を履修する学部を設置する大学である。質問紙調査票は11月下旬から3月上旬を回答期間とし、回答期限までに回収された分については、エディティングを施し、データ入力を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「教職課程の質の保証等に関わるワーキンググループ」などの審議結果を中心に教職大学院に関する情報収集を精力的に行い、高等教育政策の動向を整理した。研究代表者の村山詩帆は、今秋に刊行を予定している腰越滋編著『東京学芸大学教職教育講座シリーズ第5巻 学校教育と社会』(協同出版)に「3章 『受験体制』の生成と変容―『お受験』から『テスト体制』へ―」と「7章 大学の変容と教授・学修のエートス―危機の過程としてのユニバーサル化―」を執筆した。また、研究分担者の研究協力者の田中正弘は、9月に刊行された吉田文編著『「再」取得学歴を問う―専門職大学院の教育と実習―』(東信堂)において、「第11章 研究者養成機能を模索する法科」および「第12章 2つの大学院制度に揺れる臨床心理系」を執筆している。なお、「ミッションの再定義」を契機として教職大学院に移行する国立大学の教員養成課程の場合、教育実習の受入れ先として、附属学校の活用がさらに加速する可能性がある。このため、附属学校を支える組織的な諸条件を定量的に明らかにし、日本教育学会第73回大会のテーマ2-B部会「学校のリアリティと改革の可能性(b)」において、「国立大学附属学校と接続の課題」と題し、村山が発表している。 教育委員会と大学を対象とした質問紙調査については、11月25日に調査票を発送し、回答期限として設定していた3月9日には、調査票が未回収となっている教育委員会、大学宛にリマインダーを送付した。回収された質問紙調査票は、エディティングを施した分からデータ入力を行った。4月中に提出するとの連絡があったケースがあるため、確定値ではないが、4月15現在、郵送した592通のうち124通が回収され、回収率は約21%となっている。回収率は決して高くはないが、期待していた行政区分による複数のペアが得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
設計作業と併行して実施した、教員養成に関連のある学部を新設する予定がある地方自治体等を対象とした訪問調査の結果から、「ミッションの再定義」に伴う国立大学の教職大学院への移行が、設置者が異なる教員養成に対して影響力を与えるケースとそうでないケースが存在することが判明した。このため、研究計画を練り直し、調査対象を学部まで拡大するよう変更している。現時点では、有効回収票および有効回収率が未確定ではあるが、主要な結果については速報にまとめ、調査協力者に5月中にフィードバックする。紙媒体の速報を発送する前に、調査結果に関する照会があった場合には、あくまで確定値ではないことを断った上で電子媒体の速報を送付する。 また、教職大学院が教員養成に与える影響力の地域差を考慮し、過疎地の教育に焦点を当てたインテンシブな聞き取り調査を追加する。追加調査の対象地域は、各種統計資料から構築したデータベースの分析や将来需要推計から、地域特性を類型化し、質問紙調査の結果を加味して選定する。
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Causes of Carryover |
研究分担者1名が虫垂炎により手術を受け、退院するまでに予定していた訪問調査等を、調査日程の再調整等の都合から延期せざるをえなくなった。この措置により、次年度使用額が生じている。 また、質問紙調査の対象から、回答期限の延期について申し入れがあったことを受け、データ入力を年度内に外注することが事実上、不可能になった。このため、回収された調査票から順次、手入力する措置に切り替えざるをえなかった。これに伴い、次年度使用額が生じることとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
訪問調査の延期により生じた次年度使用額は、予定されていた訪問調査、記録データを保存するために必要なテープ起こし等を外注する費用に充当する。 データ入力の外注中止による次年度使用額については、調査対象に追加した学部のうち、得られた調査データの分析結果に照らして、特徴的な機関を抽出し、それらへの訪問調査に充てるよう計画している。
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Research Products
(5 results)