2015 Fiscal Year Research-status Report
カリフォルニア州におけるアジア系言語マイノリティの教育保障に関する研究
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26381092
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
滝沢 潤 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 准教授 (20314718)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 双方向イマージョン・プログラム / アジア系言語マイノリティ / 民族の文化と歴史の継承 / 学校支援のネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、カリフ ォルニア州におけるアジア系言語と英語の双方向イマージョン・プログラム(TWI)の実施状況とその課題について、教育委員会のリーダーシップと学校の自律性、保護者の学校参加、教員の養成・確保と研修、教科書・ 教材の確保と開発の観点から考察することを目的としている。27年度は、サクラメント市およびサンフランシスコ市でTWI実施校における保護者の学校参加の状況と課題について、校長等の管理職、教員、保護者へのインタビュー調査と、保護者への質問紙調査を実施した。重要な観点として、学校の意思決定や学校行事への参加を促進するためにどのような取組を行っているのか、アジア系言語話者と英語話者の学校参加状況や意味づけの違いがあるか、などに注目した。サクラメント市のモン語-英語のTWIプログラム実施校では、モン族の歴史を刺繍で表した作品を教室の壁面に掲示してその文化と歴史を身近に感じられるようにしており、モン・コミュニティが第二世代(保護者世代)になりつつあるなかで、かれらの文化や歴史を重視していることが明らかになった。また、サンフランシスコ市にあるカリフォルニア州で最初の中国語(広東語)-英語TWI小学校は、学校内プログラムであり、通常の英語のみのプログラムと同じキャンパス(学校内)で実施されているが、両プログラムの児童、保護者の交流が積極的に行われており、TWIに参加する広東語と英語話者だけではなく、プログラムを異にする英語話者との相互理解が学校経営の重要な方針となっていた。こうした相乗効果が学校全体の高い教育達成につながっているのではないかとの仮説が得られた。また、この学校は、市内にとどまらず州内の他のTWI実施校のモデルとなっており、広域的かつ教育委員会の管轄を超えたプログラム開発、教員養成・研修の連携・協力のあり方も今後の重要な研究課題としていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
27年度は、当初予定していたTWIの創設に関するサクラメントでの調査に加え、アジア系言語と英語のTWIの継続・定着を実現する諸条件や課題を検討するために、サンフランシスコ統合学区における訪問調査を行った。 訪問調査が実施したうちの1校は、カリフォルニア州において中国語(広東語)-英語TWIを最も早くから実施している学校であり、他の同様のプログラムのモデルともなっている。他の学校との連携・協力の観点からアジア系言語TWIの継続・定着に関する研究を大きく促進することが期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
28年度は、TWIの継続・定着を実現する諸条件や 課題を検討するために、サンフランシスコ統合学区における訪問調査を行う。 サンフランシスコ統合学区は、言語マイノリティ教育における画期的な連邦最高裁判決であるラォ判決の舞台であり、アメリカの言語マイノリティ教育の先進地の一つである。訪問調査については、教育委員会のリーダーシップ等を中心に行うがアジア系言語のTWI の歴史的展開と現在の特徴について注目する。特にアジア系 言語のTWIが学区の教育政策の枠組みに中でどのように位置づけられてきたのか、プログラムの実施状況の推移(児童・生徒の社会階層の変化、カリキュラムの開発・改善、教員養成・確保と研修など)について、学校、教育委員会の関係者へのインタビューや資料収集を行う。
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Research Products
(1 results)