2017 Fiscal Year Annual Research Report
Study on Securing the Educational Opportunitiy for Asian Language Minoritiy Students in California
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26381092
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
滝沢 潤 広島大学, 教育学研究科, 准教授 (20314718)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | アジア系言語マイノリティ / 双方向イマージョン・プログラム / 学校選択 / 教育の正統性 / 人的ネットワーク / 専門的指導性 / アイデンティティ |
Outline of Annual Research Achievements |
アジア系言語マイノリティの教育保障に関して、アメリカ合衆国カリフォルニア州における双方向イマージョン・プログラム(TWI)の実施状況とその課題を考察した結果、以下のような研究成果が得られた。 (1)州内の言語マイノリティの大多数を占めるヒスパニック(スペイン語話者)の場合、TWI実施校の創設・運営には、学校レベルで教育・経営資源を調達することが可能であり、自律的な学校経営が比較的容易である。しかし、小規模である北京語やモン語のTWI実施校の創設・運営には、教育委員会のイニシャティブが大きく作用しており、その専門的指導性がより重要である。一方、小規模の言語グループが学区教育委員会の意思決定(TWI実施校の創設)に影響力を行使するのは容易ではないことから、学校選択制度を通じたTWI実施校の正統性の確保が重要な意味をもつ。(2)教員確保においては、いわゆる「口コミ」に依存している部分が大きく、言語コミュニティの人的ネットワークが重要である。(3)モン族のように保護者が(難民)第二世代となり、自らの文化や歴史が希薄化する中で第三世代にモン族としてのアイデンティティや自尊心を確立するためにTWI実施校が意義づけられており、必ずしも経済的な優位性に基づかない教育機会の保障のあり方が問われている。(4)州及び教育委員会の財政難から、教材の開発、教員養成・研修には十分な支援はなく、TWIプログラムを担当する教員チームがそうした活動を積極的に行わざるを得ない状況にある。(5)2016年に可決された州民投票・提案58によって、保護者のTWI実施校の選択権や学区・学校の教育の専門性が重視されることになったものの、1998年に可決された提案227においてイングリッシュ・オンリーの政策が実施されてきたことで、質の高いTWIを創設・実施するための教員不足、学区間の実施能力の格差などが課題となっている。
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