2015 Fiscal Year Research-status Report
インクルーシブ保育に関わる保育者のエンパワメントプログラムの開発
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26381098
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Research Institution | Showa Women's University |
Principal Investigator |
石井 正子 昭和女子大学, 生活機構研究科, 准教授 (20449094)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | エンパワメントプログラム / ワークショップ / インシデントプロセス法 / アセスメントシート / やりがいと自信 / 海外視察 |
Outline of Annual Research Achievements |
バーンアウト傾向尺度、特別支援教育負担感尺度に代わるものとして、ポジティブな感情にも目を向け、インクルーシブ保育に関して保育者が抱える不安や,負担感とともにやりがい感、専門性への自信を図る質問紙を作成した。 当初の計画に従い、エンパワメントプログラムとして連続ワークショップを実施した。7月初旬より、実施プログラムと参加者の募集方法について検討し、日程と会場を決定した。9月に入って参加者の募集を開始し、最終的には37名の参加者が集まった。平成27年11月14日~平成28年1月30日まで、6回実施。インシデントプロセス法を用いたプログラムにより、参加者から「対応が難しい子ども」の事例を出してもらい、発表者への質問、グループごとの話しあい、全体討議の中で事例の詳細を明らかにし、アセスメントシートを作成した。さらに、アセスメントシートをもとに参加者自身が「明日の保育に生かせる方法」を考えた。このワークショップの成果をまとめ、平成28年4月北海道大学で行われた日本発達心理学会第27回研究大会での発表につなげた。 平成26年9月に行った米国ノースカロライナ州におけるTEACCHプログラム研修に関連して、視察内容の一部を臨床発達心理学研究に投稿し、論文が掲載された。「TEACCHプログラムによる学童期の自閉症児支援」というテーマで、学童期の自閉症児支援、特に自閉症スペシャリストや担当教員の研修、コンサルテーションにおいてTEACCHセンターが教師のエンパワメントに関して重要な役割を担っていることに触れている。平成28年3月には、教育・保育におけるインクルージョンを積極的に進めているニュージーランドの保育所、幼稚園、小学校、プレイグループの視察並びに担当者へのインタヴューを行い、教師、保育者、保護者に対するエンパワメントがどのように行われているかについて多くの情報を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度は、校務の都合と研究協力をお願いしていた幼稚園の体制が子ども園に変更されたため、これまで継続的にかかわってきた幼稚園への定期的訪問が難しくなり、幼稚園における通常保育の中でのアセスメントシートの活用とエンパワメント効果の測定が難しかった。しかし、エンパワメントプログラムの中では、保育者自身によるアセスメントシートの作成や活用が行えたので、この点を生かして、アセスメントシートの活用について研究をまとめたい。エンパワメントプログラムの実施時期が年度後半になったため、最初と最後に実施した質問紙について、効果の分析が終了していない。 海外視察については、平成26年度にノースカロライナで行ったTEACCHプログラム視察に加え、平成28年3月に、インクルージョンを積極的に進めているニュージーランドの視察を実施したため、思いのほか多くの記録データがあり、分析が完了していない。したがって、平成27年度中に予定していた、海外視察の成果とまとめは、平成28年度にずれ込む見通しである。
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Strategy for Future Research Activity |
調査協力園でのアセスメントシートの活用が難しくなったが、ワークショップの中でインシデントプロセス法の利用によって出された複数事例に関して、アセスメントシートを利用することによって、丁寧にアセスメントを行い、対応を検討することが可能になったので、この事例を活用することによって、効果的なエンパワメントプログラムの開発に結び付く研究成果をまとめることが可能になると考えている。 また、このワークショップに参加した保育者の中から、自ら、プログラムを実施したいという申し出があり、保育者自身がファシリテーターとなって新たにワークショップ形式の研修プログラムを行う計画が進んでいる。この計画と連携し、アセスメントシートの活用について、データを加えることが可能になると考えている。 また、海外視察から得られたインクルーシブ保育・教育に関する知見は、幼児期を対象とした保育者のエンパワメントに留まらず、小学校における担当教諭、保護者まで視野を広げた、様々な取り組みに関するものであったが、今後は研究テーマに即して得られた情報を保育者のエンパワメントにどのようにつなげていくかに絞ってまとめ、考察を行っていくつもりである。
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Causes of Carryover |
備品について、当初購入を予定していたノートパソコンよりも高性能の機種が安価で購入できた。また、ワークショップで使用予定だったiPadについては大学の所属部署が所有している備品を借用できることになったため、購入を見合わせた。(ワークショップの初回に借用したiPadを持参したが、参加者が使用に慣れておらず、今回のワークショップでは、結果的に模造紙と付箋を利用した。研修会へのICTの導入には、そのための十分な準備時間が必要であることがわかった。) アンケートの分析作業の依頼が遅れており、結果の入力分析にかかる人件費が未使用である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
自由記述部分の分析には、自由記述の解析ソフトを使用した方が、詳細な分析が可能になるため、購入する予定である。 研究成果を印刷物としてまとめ、ワークショップの参加者、研究に協力してくれた保育者に配布する予定である。 研究成果を国際学会で発表したいと考えている。ただし、研究計画に遅れが生じており、成果のまとめに今しばらく時間を要するので、補助事業期間延長を申請し、国際学会での発表につなげたい。
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