2014 Fiscal Year Research-status Report
総力戦体制下の保育雑誌に見る「国民保育」論の生成と展開――『国民保育』誌を中心に
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26381105
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Research Institution | Chubu Gakuin University |
Principal Investigator |
浅野 俊和 中部学院大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (00300351)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 国民保育 / 総力戦体制 / 保育雑誌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、保育・幼児教育史で最も研究が遅れている1930年代末から1940年代前半にかけての時期、いわゆる「総力戦体制」下に焦点を当て、新たに発掘した保育雑誌『国民保育』(1941(昭和16)年1月創刊、「国民保育協会」編輯、フレーベル館(のちに日本保育館と改称)発行)の書誌的調査及び誌面の総合的な分析・検討を進め、すでに先行研究がある他誌との比較・検証も行うことを通して、その当時における「国民保育」論の形成と展開を跡づけるものである。平成26年度(1年目)の計画では、保育雑誌『国民保育』の書誌的調査及び文献収集を精力的に行い、所蔵の確認や総目次の作成、「国民保育協会」の発足・展開に関する歴史的背景の把握などの作業を進める一方、研究成果の中間報告も行うとした。 『国民保育』誌については、四国大学附属図書館・東京家政大学図書館・大阪府立中央図書館(国際児童文学館)の3館が原本25号(館相互・同館内で複本が見られるため、のべ42冊)を所蔵している。今年度は、他館における所蔵調査を実施したけれども、それは確認できず、大阪府立中央図書館(国際児童文学館)の所蔵分(2冊)に関する書誌的調査と当時出版された保育・幼児教育関係の単行本の文献収集のみを行った。 また、総力戦体制下において刊行されていた他誌について、今年度は『愛育』誌を取りあげ、同誌掲載の「日本保育研究会々報」を手がかりとして、口頭発表「戦時下保育運動の〈終焉〉と〈転生〉―― 恩賜財団愛育会「日本保育研究会」の組織・活動に見る「国民保育」論」(日本ペスタロッチー・フレーベル学会第32回大会、2014年8月31日、於・鎌倉女子大学)を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年度(1年目)は、『国民保育』誌の所蔵調査と並行し、同誌原本を所蔵する四国大学附属図書館・東京家政大学図書館・大阪府立中央図書館(国際児童文学館)の3館において、25号分(館相互・同館内で複本が見られるため、のべ42冊)の調査を行い、その複写及び書誌的な検討、目次・本文の照合に基づく総目次の作成といった作業を進める計画であった。しかし、3館以外の所蔵は確認できておらず、大阪府立中央図書館(国際児童文学館)における書誌的調査を終了させるまでしか至っていない。ただし、総力戦体制下において刊行されていた保育雑誌・単行本の調査は進めており、『愛育』誌掲載の「日本保育研究会々報」をもとに、同研究会に関する研究の口頭発表は行った。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度(2年目)は、『国民保育』誌で所在不明・未確認の状態にある巻号の継続的な調査を進め、前年度における研究の遅れが回復できるような体制づくりを行う。具体的には、四国大学附属図書館・東京家政大学図書館所蔵の原本に関する書誌的調査を実施し、目次・本文の照合に基づく総目次の作成といった作業を行う。また、「国民保育協会」による編輯のもとで形成・展開された「国民保育」論の内実を検討するため、『国民保育』誌へと掲載されている論稿・記事などを詳細に分析し、その言説の思想的な傾向や特色を明らかにする。さらに、それらの研究成果に基づいて、研究ノートなども執筆し、関連学会における口頭発表(ポスター発表も含む)を行う。
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