2014 Fiscal Year Research-status Report
誤解事例を通して保護者―保育者間のコミュニケーション改善をめざす研究
Project/Area Number |
26381112
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Research Institution | Kyoto Bunkyo Junior College |
Principal Investigator |
張 貞京 京都文教短期大学, 幼児教育学科, 講師 (50551975)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
真下 知子 京都文教短期大学, 幼児教育学科, 講師 (80551978)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 保育者 / 保護者 / 誤解 / コミュニケーション改善 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は誤解のプロセスと要因に着目し、その対応策を探るとともに保育者を取り巻く保護者対応の難しさを軽減していく作業、保育者支援のリカレント教育的作業を同時進行させ、その結果は、保育者養成にも活用していくことを目的としている。 2014年度の予定は保護者と保育者間に発生した誤解事例を両者を対象に自由記述式アンケートにより収集しようとしたが、保育者対象のみの実施となった。調査の目的は、①誤解事例を多く収集し、多様な要因を明らかにするため、②誤解経験が与える影響および誤解事例を通して保護者対応を学ぶ研修の希望を調査するためである。 32ヶ園の保育所が対象となり、419件の回答が得られた。保護者に誤解された経験をもつ保育者が185名であり、誤解事例は184事例を収集した。誤解の要因は、6つのカテゴリー(時間的なずれ、コミュニケーション媒体、伝達表現の問題、場面、認識のずれ、対応・確認不足)に分類された。誤解の発生要因はカテゴリーが重複する事例もあり、発生メカニズムの複雑さが表れていた。カテゴリー中、もっとも高い割合は、「伝達表現の問題」であり、保育中に起こった事態について説明する際、説明不足、説明過多のどちらも誤解の要因となることがあった。子どもを褒めたつもりが違う受け取られ方をされた例もみられ、相手に合わせた伝達の仕方や様々な場面がはらむ不安要素を意識して取り除く工夫が望まれる。 誤解された経験が与えた影響は、保護者とのやり取りが苦手となった例もあるが、言葉使いや伝達の仕方に気を付けるようになった等、日々の注意が明らかであった。また、研修の希望については、誤解経験の有無と関連なく希望者が半数以上を占めていた。誤解経験がなく希望している人は日々の保育で何らかの不安を感じているためと考えられた。誤解経験の有無に関わらず、保護者とのコミュニケーションを改善する研修が求められている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2014年度の研究予定は、保育者が経験した誤解事例の収集および保護者の経験を質問紙調査する予定であったが、保育者対象の調査のみ実施している。遅れた理由は次の2点である。 ①保育者へのアンケート実施内容を誤解経験の事例のみではなく、経験が与えた影響および誤解経験を通して学ぶ保護者対応の研修希望を調査した。アンケート結果をリカレント教育につなげていくために、その影響と研修希望を確かめる必要があると考えられた。アンケートの実施を重複させないためにアンケート項目を再検討し実施した。 ②調査協力を32ヶ園に行った際、アンケート回収の時期について保育園からの要望があり、保育園行事等の関連で調査の回収時期が10月末となった。11月に返信があった園も数か所あったため、回収時期が遅くなった。対象園の都合に合わせることによって、たくさんの回答を得ることができた。その回答を分析し得られたものから、保護者対象のアンケート項目を見直すためにも保護者対象の調査実施を延期した。
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Strategy for Future Research Activity |
2015年度は、次の2点について研究を進める。 ①保護者を対象に、保育者との間で発生した誤解事例を収集する。保護者対象であり、デリケートな話題である誤解であるため、保育者には配布のみをお願いし、研究者に直接返信できるように配慮して実施する。 保護者が誤解しやすい要因は何か、また、誤解したことを保育者に伝えようとするのか、伝えないのか、それぞれの理由は何かについて調査する。 ②昨年度の調査対象者より、10名程度の保育者(勤務年数に偏りのないように配慮)に誤解体験に関するインタビューを実施する。誤解されたことに気づいたときの思い、どのように思いが変化し、保育者の意識にどのように影響を与え、保育に活かされるようになったかを調査する。なお、インタビューは肯定的な意味づけを通して、辛い記憶を緩和し、保育に活かされるものとして対象者本人へのフィードバックに留意する。
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Causes of Carryover |
①保育者と保護者の両方に調査を実施する予定であったが、保育者のみの実施であったため、保護者対象の調査実施予定額が残った。保護者対象は匿名性を維持するため、郵送による直接返信を予定している。保護者の回答数は依頼数の半分以下であると予測している。そのため、可能な限りたくさんの数を依頼する予定であり、回答されない場合において、返信用の切手の回収は見込めない。 ②二つの学会で発表参加を予定していたが、本研究の採択決定後に発表参加できる学会の開催時期が2015年3月末であったため、2014年度の予算からは3月末に開催された学会のみの支出となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
①保護者対象の調査実施を予定している。回答する保護者の匿名性を維持するため、依頼文とアンケート用紙の配付のみを保育園に依頼し、保護者が郵送で直接返信できるようにする。そのため、保護者の回答数は依頼数の半分以下であると予測している。保育者からの回答が400件を超えていた為、比較研究のためには充分な数の確保が必要であり、可能な限りたくさんの数を依頼する予定である。なお、回答されない場合において、返信用の切手の回収は見込めない。 ②2015年5月に開催された学会での発表参加が終了している。2015年度は例年3月開催の学会が開催地域の関係で4月末の開催に変更された。分析状況によって、年度内の発表を別の学会で行えるよう検討している。
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