2015 Fiscal Year Research-status Report
誤解事例を通して保護者―保育者間のコミュニケーション改善をめざす研究
Project/Area Number |
26381112
|
Research Institution | Kyoto Bunkyo Junior College |
Principal Investigator |
張 貞京 京都文教短期大学, 幼児教育学科, 講師 (50551975)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
真下 知子 京都文教短期大学, 幼児教育学科, 講師 (80551978)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 保育者 / 保護者 / 誤解 / コミュニケーション改善 |
Outline of Annual Research Achievements |
①2014年度に実施した保育者対象の質問紙調査について、さらに分析を行い、誤解された体験の保育への影響、保護者を誤解した要因について分析した。 ・誤解された体験をした保育者は日頃のコミュニケーションの大切さを再認識し、保護者の理解、子どもの姿を共有する様々な工夫をしていた。突発的出来事や特別なニーズが発生してからではなく、日頃から保護者とコミュニケーションを取り、信頼関係を作るように努めていた。また、伝達の手段の違いに関わらず、伝達時の適切な言葉選びが誤解発生の可能性を抑制するものとして意識されていた。さらに、各々の保護者が抱く思いの違いを理解し、伝えるべき内容の優先順位を判断し、事実は詳細に伝えるとともに、理由を説明したうえで伝えるように努めていることが判明した。このように誤解された経験を貴重な学びへと転換させていることが示唆された。 ・保護者を誤解した事例では、連絡帳、手紙、電話などで、保育者の理解と解釈が、保護者の意図と食い違ったことによって誤解が発生していた。複数の保育者が、後から口頭で確認したと回答しており、対面でのやりとりが重視されていた。保育現場の実態として、保護者と話す機会の不足や、言われた内容の確認と理解不足が誤解発生の要因と考えられた。保育者にとって、限られた時間に如何にコミュニケーションをとるかが課題といえる。さらに、信頼関係を構築する以前の段階において、直接的な話し方をする保護者、いつも急いで降園する保護者に対する保育者の思い込みがみられた。これは保護者支援を行っていく際、最初に乗り越えなければならない障壁といえよう。 ②保護者対象の質問紙調査を実施した。保育園の協力を得て、795世帯の保護者を対象に質問紙を発送し、返信は309通が得られた。そのうち、誤解体験に関する記述が得られたのは、73通であったが、誤解体験の事例と判断できるものは66通であった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2015年度の研究予定は、保護者対象の質問紙調査を実施し、誤解された体験をした保育者への個別インタビュー調査を実施するものであったが、保護者対象の質問紙調査のみ実施している。 遅れた理由は次の2点である。 ①保護者対象の調査依頼時期が10月末になった。保育者との間で発生した誤解事例を問うため、保育者との関係が落ち着いたところで実施する必要があると考え、運動会などが終了した時期に発送した。回収期限を11月に設定していたが、実際の返信は12月末まで続いた。 ②保育者対象の個別インタビュー調査には、2014年度に実施した誤解体験の分析をさらに進める必要があると考えた。誤解された体験の内容を分析した結果によって、インタビュー対象者の選別基準を得ることが、誤解発生のメカニズムの解明につながると考えられたためである。分析に時間を要し、その後の調査依頼、対象者の募集および調査実施が年度内に実施できなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
①保護者から得られた66通の誤解体験を事例分析し、保育者の誤解体験との比較分析を進める。保育者と保護者の両者の視点から、誤解の要因、発生するプロセスを明らかにし、誤解を発生させないためには、どのようなコミュニケーションスキルが必要かについて明らかにしていく。 ②誤解体験をした保育者への個別インタビューの実施を進めるとももに、グループインタビューを行う。保育者対象の質問紙調査では、誤解体験の程度によって、つらい記憶として残っている例がみられた。個別インタビューとグループインタビューを体験し、これまでの体験をただネガティヴなものとして残すのではなく、そこから得られたものにも目を向け、新たな意味づけができるよう誤解体験の変容を促していく。また、インタビューの分析結果より、誤解を発生させず、保護者とのコミュニケーション力を高める研修プログラムを作成、実施する。
|
Causes of Carryover |
①誤解経験をした保育者への個別インタビューおよびグループインタビューを実施し、録音した音声を文字に起こしてデータ化する予定だったが、実施できなかった。個別インタビュー対象者は予備調査を含め15名程度であり、一人当たり1時間以上を要する。また、別途グループインタビューを実施するため、音声テープのおこしに今年度の予算額の7割が使われる予定であった。 ②発表を行っている学会が4月と5月にあり、2015年度予算からの支出とならなかった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
①誤解経験をした保育者への個別インタビューおよびグループインタビューを実施する予定である。予備調査および本調査を実施するため、約15名へのインタビューを予定している。1名当たり1時間程度の個別インタビューおよびグループインタビューを別途行った場合、録音音声のテープおこしの合計金額は50万円を超えると予想される。その他、インタビュー対象者への謝礼費や会場費などの経費が予想される。 ②学会旅費、協力園への報告書作成費用などを予定している。
|