2015 Fiscal Year Research-status Report
教育実践開発の継承・普及プロセスに関する社会学的研究
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26381120
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
森 直人 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (10434515)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 個別化・個性化 / 教育実践 / 社会学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、(1)1970年代末から80年代にかけて日本における「個別化・個性化教育」実践プログラム開発にあたり中心的役割を担った元教員へのインタビュー調査を、前年度から対象を広げつつ、論点を掘り下げて継続するとともに、(2)同プログラムに含まれる学習モジュールを導入した東京都内の公立小学校での授業観察調査と教員へのインタビュー調査、(3)さらに岐阜県内で新たに導入に向けた準備を進めつつある中学校への予備調査を行った。他方で、(4)「個別化・個性化教育」との比較対照群として設定した戦後・福井県の縦割りホームルーム制にかんする資料収集調査、同実践の2000年代以降の公立中学校への継承・普及の取り組みと、その過程での教員の入れ替えにともなう教育実践の変質について、関係者への聞き取り調査をはじめとするフィールドワークを行った。 調査を行った聞き取りのうち、歴史的資料として価値のある1980年代当時の「個別化・個性化教育」実践の開発当事者による証言については、文字起こしをしたうえで、来年度の研究終了後にオーラルヒストリー資料として公開可能なものにすべく、他の関連する歴史資料との照合と並行して編集作業を継続中である。今年度は、主たる対象である「個別化・個性化教育」から得られる知見の固有性と普遍性を検討するために適切な比較対照群を(4)において適切に設定することができた。また、1980年代の「個別化・個性化教育」の継承・普及プロセスについても、(2)と(3)とで比較検討の可能な調査対象へのフィールドエントリに成功した。来年度の最終的な知見のとりまとめに向けた基盤を構築できたといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、主たる対象である「個別化・個性化教育」から得られる知見の固有性と普遍性を検討するために適切な比較対照群を、福井県の公立高校から中学校への縦割りホームルーム制の継承事例に設定することができた。これは申請時の研究計画からの変更点だが、この中学校は教科センター方式を採用しており、また継承後のプロセスに重要な論点を含む変遷がみられることから、「個別化・個性化教育」との比較検討のうえではより妥当かつ有意味なものである。また、1980年代の「個別化・個性化教育」の継承・普及プロセスについても、新たな導入準備に入った東海地方の私立中学校へのフィールドエントリに成功し、すでに授業観察と教員への聞き取りを行っている東京都内の事例との比較検討が可能となった。そのぶん、海外のオープンスクール教育の導入・実践事例の調査が未実施であるなどの遅れもないわけではないが、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
1980年代当時の「個別化・個性化教育」実践の開発当事者へのインタビュー調査は、学校調査や比較対照群への聞き取り・資料収集調査から得られた知見をもとに射程を広げつつ、さらに論点を掘り下げた聞き取りへと発展させ、オーラルヒストリー資料としての公刊が可能なかたちでの編集作業を進める。「個別化・個性化教育」実践プログラムの継承・普及プロセスについて、2つの事例を比較検討しながら、学校の観察調査、教員への聞き取り調査を含めた総合的なフィールドワークを継続する。また「個別化・個性化教育」と、その固有性/普遍性を抽出するための比較対照群としての福井・縦割りホームルーム制とについては、学校に視点を固定した定点調査と、実践にかかわった教員のその後を追う縦断調査との2つの視角を交差させた歴史的検討を進める。以上の作業の進み具合を勘案して海外調査の実施を検討し、諸調査から得られた知見を総合して、最終的な研究成果のとりまとめを行う。
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