2015 Fiscal Year Research-status Report
戦後長期欠席問題の「解決」の再検討-就学をめぐる包摂のポリティクス
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26381122
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
加藤 美帆 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 准教授 (60432027)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 長期欠席 / 人身売買 / 児童福祉 |
Outline of Annual Research Achievements |
長期欠席が社会問題として全国調査の対象ともなり大きく取り上げられたのは、1950年代が中心だが、その問題化の背景を明らかにするためには占領期における子どもの欠席の問題化の過程を明らかにする必要がある。本年度の調査では、当時の欠席調査に関する資料を網羅的に調査するなかで、子どもの人身売買がGHQによって問題視されていくことと欠席調査との関連性が浮かび上がった。両者の関連性は、当時の児童福祉をめぐる社会的文脈およびGHQと日本側とのやり取りも踏まえた検討によってより明らかにしていく予定である。 加えて、1950年代以後においても長期欠席の把握においては様々な地域差を見いだすこともできた。アメリカ統治下にあった沖縄においては琉球政府文教局による学校基本調査が実施されていたが、これは本土の学校基本調査を踏まえた調査である。この調査の内容を検討すると、学校統計としての機能を十分に果たすことが当初は困難であったことも読み取ることができる。長期欠席者調査は時期、内容とも本土における調査と同じに行われていた訳でなく、学校調査自体が戦後どのような軌跡を経たかも検討を要する課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
学会での報告を何回か行う予定でいたが、資料の検討が間に合わずにこれまではその機会を得ることができなかった。分析の枠組みについての理論的な検討についても予定通りには進んでおらず、最終年においては、これらの遅れている課題への対応を行うことを計画している。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、占領期の児童福祉と子どもの欠席に関わる文書を中心に資料収集と検討を中心に行う。多くは国会図書館で入手ができるが、必要に応じて各地域および米国での資料収集も行う。 成果については学会報告および、論文として発表予定である。
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Causes of Carryover |
予定していた謝金による業務の量が、実際には少なかったため、計画していたよりも支出が若干少なくなった。当初より調査研究を三年間で計画していたため、残額は次年度の使用とした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
引き続き資料収集を実施するための旅費、データ整理のためのアルバイト謝金として主たる使用を計画している。そのほか日本教育学会(於:北海道大学)、日本教育社会学会(於:名古屋大学)などの学会大会での研究発表および情報収集を予定しているため、そのための旅費等の支出も含まれる。
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