2014 Fiscal Year Research-status Report
国際バカロレア導入によるグローバル化に対応した中等教育に関する研究
Project/Area Number |
26381130
|
Research Institution | Nara University of Education |
Principal Investigator |
渋谷 真樹 奈良教育大学, 教育学部, 准教授 (80324953)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 多文化教育 / 国際バカロレア / グローバリゼーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本の中等教育に国際バカロレアを導入することの利点や課題を明らかにしようとする研究である。 初年度である2014年度にはまず、国際バカロレアの教育がとりわけ有用であると考えられる海外帰国子女や国際結婚家庭、外国人家庭の教育の現状やニーズについて調査した。それぞれについて、先行研究を整理するとともに、地域の学習支援団体で参与観察をするなどして、当事者たちの具体的な声を調査した。 次に、国際バカロレアの理念やカリキュラムを調査した。国際バカロレア機構の資料を読み込むとともに、同機構のワークショップや国際バカロレア認定校が主催するシンポジウム、公開授業などに参加して情報を集めた。また、国際バカロレア認定校であるインターナショナルスクールでフィールドワークを行い、その成果の一部を『日本の外国人学校―トランスナショナリティをめぐる教育政策の課題―』(2014、明石書店)に集録した。 さらに、日本で先進的に国際バカロレア教育を行っている一条校に訪問し、その教育実践を観察するとともに、管理職にインタビューを行った。その成果の一部は、「一条校による国際バカロレア導入の意図と背景―学校管理職の語りから―」と題する論文にまとめ、日本国際理解教育学会に投稿して、採択された。2015年6月に、刊行予定である。そこでは、国際バカロレア先進校は、政府の意図と部分的に呼応しつつも、個々の教育理念の実現や「生き残り」をかけて、グローバルスタンダードとされる教育プログラムを導入していることが明らかになった。それを享受しうる生徒は多くの場合、恵まれた層であることや、国際バカロレア自体にバイアスが潜んでいる可能性もあることも明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国際バカロレアの教育理念、カリキュラム、実践の把握については、先行研究や公式文書の調査のみならず、関連のワークショップやシンポジウム等に参加して情報を集めた。すでに国際バカロレアに日程されている一条校についてはすべて1回以上の訪問調査をした。現在認定準備中の学校については、5校を訪問した。インターナショナルスクールについては2校を訪問した。ただし、英米の国際バカロレア校についてはまだ訪問できておらず、今後の課題である。 多文化状況以下の教育の現状や課題の把握については、国際結婚家庭や外国人家庭については参与観察を始めている。調査駐在員家庭については文献調査が中心であり、今後具体的な調査をすすめていく。 日本への国際バカロレア導入の利点や課題については、先進的な一条校の管理職にインタビューを行い、分析をした論文が、日本国際教育学会に採択された。
|
Strategy for Future Research Activity |
2015年度も引き続き、関連のワークショップやシンポジウム等に参加して国際バカロレアに関する情報を集める。国際バカロレア認定校、および、候補校についても、引き続き調査を続ける。 多文化家庭の教育の現状やニーズについては、調査協力者を募り、集中的な聞き取り調査を行っていく。まずは、すでに国際バカロレア認定校に通わせている保護者に対して聞き取りを行っていきたい。 また、海外の国際バカロレアの実施状況についても調査をしていく。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が約20万円になった理由は、主に、予定していたイギリスの国際バカロレア校への海外調査を延期したためである。2014年度は、国内ですでに国際バカロレアに認定された5校を調査することに集中し、海外の状況については、文献調査を進めた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
2015年度は、海外調査を行い、繰り越した20万円を使用する予定である。具体的には、非英語圏であり、従来型の筆記試験による大学入試が根強く残るという点で日本と状況が近い台湾での調査を予定している。その他、2015年度の当初からの外国旅費予算では、公立での国際バカロレア校の多いイギリスまたはアメリカに8日間程度の調査を予定している。
|
Research Products
(2 results)