2014 Fiscal Year Research-status Report
中国の対外言語教育政策に関する研究―孔子学院の世界展開を中心に
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26381133
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Research Institution | Fukuyama University |
Principal Investigator |
大塚 豊 福山大学, 大学教育センター, 教授 (00116550)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 中国 / 対外言語教育政策 / 孔子学院 / 華語 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、2005年にソウルに創設された第1号以来、2014年末時点で127の国・地域に476か所も設置された孔子学院(これに準じる孔子課堂と呼ばれる851の組織もある)を拠点として中国が展開する対外的な中国語・中国文化の普及活動に注目した。 孔子学院については、中国がその「ソフトパワー」を使って、究極的に政治的影響力やイデオロギーを浸透させる手段であり、中国の宣伝機関や潜在的な「文化侵略」との批判もあり、欧米の大学を中心に、キャンパス内での運営を見直したり、廃止したりするところも出ている。中国国内でも、その不均衡な教育発展や地域間格差の存在を理由に反対論があるにもかかわらず、中国がそうした批判を脇に置き、巨額の経費を投じて本事業を推進してきたのは、当然のことながら国家的対外戦略と位置づけているからで他ならない。 本研究では、これらの賛否両論に見られがちな極論や感情論に陥ることなく、中国の対外言語教育政策と具体的措置の実態に関して、そうした政策や措置の受け入れ側の反応も含めて、実証的に解明することに努めてきた。 初年度には、札幌大学および一時イデオロギー論争の焦点となったこともある大阪産業大学の孔子学院を訪問し、インタビュー調査を行った。また、諸外国の孔子学院の実態調査も実施した。韓国では、後発の孔子学院の事例として仁川大学孔子学院を訪問調査し、また、ドイツのフライブルグ大学およびハンブルグ大学の孔子学院でのインタビューおよび資料収集を行った。さらに、インドネシアのジャカルタ、スラバヤ、マラン等の各地の大学に置かれた孔子学院でのインタビュー調査を実施するとともに、インドネシア地方都市における華語・漢語教育の実態に関する論考をまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各国所在の孔子学院のホームページから得られるインターネット情報も含めて文献・資料を丹念に収集、翻訳、整理・分類するとともに、典型事例と思われる国内外のいくつかの孔子学院を実際に訪問し、関係者へのインタビュー調査を通じて、文献・資料からは把握しにくい実態の理解に努めた。すなわち、中国の対外言語教育の政策と実践に関する政策意図ならびに具体的措置について詳細に把握するため、政策研究機関として中央政府の孔子学院本部の関係者へのインタビューの他、ドイツ、韓国、インドネシアのいくつかの孔子学院の訪問調査を実施した。調査文献・資料面での調査や分析検討はほぼ計画どおり進めることができた。しかしながら、研究代表者の勤務先変更および職務内容の変化等に伴い、時間的制約と体調不良などのために、予定していたアメリカ諸大学の訪問調査は行えなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に引き続き、関連情報を文献・資料ならびにインターネット情報の中から広く収集し、分析する作業を継続するとともに、初年度の経験に照らして、分析項目の再検討を適宜行う。前年度予定していて実施できなかったアメリカの孔子学院は海外調査の対象としたい。とくに、孔子学院に中国の宣伝機関の色彩があり、中国に批判的な議論を認めないなど「学問の自由」に反するとして、2014年9月に孔子学院の運営契約を延長しないことを表明したと伝えられるシカゴ大学など、孔子学院に対する批判がどの程度の広がりを持つものであるかを見極める必要があろう。アメリカにおいて最も早く設置されたメリーランド大学孔子学院と後発の機関との運営や対応の違いの有無も、韓国の事例との比較対象を行うことで、中国と受け入れ国との相互の思惑や政策意図を読み取ることが可能ではないかと考えられる。この他、先進国と途上国、中国文化との距離の本来的な遠近による孔子学院の捉え方、活用方法も分析枠組みとして検討に値すると思われる。
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Causes of Carryover |
勤務先の異動により職務内容・授業担当科目等が変わり、それへの適応に手間取ったため、当初の研究計画の遂行に若干の支障が生じたため、ごくわずかながら補助金に残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
少額の残額であり、次年度の研究遂行計画に必要な予算として組み込み、速やかに使用する予定である。
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