2015 Fiscal Year Research-status Report
日本人学校におけるグローバル人材育成にむけた新たな教育モデルの創出に関する研究
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26381141
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Research Institution | Mejiro University |
Principal Investigator |
佐藤 郡衛 目白大学, 人間学部, 教授 (20205909)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 日本人学校 / グローバル人材 / グローバルな資質・能力 / 海外子女教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、香港日本人学校と蘇州日本人学校の訪問調査を行った。香港日本人学校では、香港小学校を訪問し、新しく設置する「グローバル・クラス」について、学校関係者と協議した。特に新しく開設する科目「グローバル・スタディズ」について基本的なコンセプト、カリキュラムの枠組み、授業の進め方、評価の仕方などについて検討し明確化した。特に、トピックの選択の仕方、活動の組みたて方(長期にわたるプロジェクト型学習)、教師の指導などの具体的な課題について話し合いを行った。その後も、グローバル・クラスの平成28年度開設に向けた支援を継続的に行った。 蘇州日本人学校では、全児童生徒を対象にして、学習習慣、学習意欲、生活実態、交友関係、自己概念等を把握するための質問紙調査を学校と共同で実施し、その結果を全教職員に向けて報告し、具体の指導の課題について協議した。特に、学力調査結果と質問紙調査結果とを各学年ごとにつきあわせをし、指導の指針について協議を行った。 成果としては、香港日本人学校では、香港校小学部でグローバル人材の育成を目指した「グローバル・クラス」の開設が決定し、新たな日本人学校の教育モデルの1つを示すことができた点である。特に、その特徴として高い日本語能力と英語力をつけるためのカリキュラム、独自科目の「グローバル・スタディズ」の内容が明確になった点は大きな成果の1つである。また、蘇州日本人学校では児童生徒の実態調査により学校・学級の具体の課題を明らかにできた点が成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は、蘇州日本人学校、香港日本人学校の2校に絞り調査を継続することだったが、予定通り訪問調査が遂行できた。特に、香港日本人学校の新しい試みが実現したことは大きな成果である。しかし、まだ、立ち上がったばかりであり、継続的な支援が必要である。平成28年度にも訪問調査を行い、成果の検証と課題を明らかにするとともに、必要な支援をついて検討する。 蘇州日本人学校では全児童生徒を対象にした質問紙調査を行い、それをもとに指導計画の作成までこぎつけたことは成果である。ただ、その指導計画がどの程度まで実行に移され効果が出ているかという評価はこれからの課題である。 また、両校とも派遣教員の任期が2~3年であり、担当してきた教員が入れ替わることになり、こうした試みをどのように継続するかが大きな課題であり、この対応について具体的に検討する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、香港日本人学校香港校小学部において立ち上がった「グローバル・クラス」の成果と課題を明らかにしたい。そのために、関連資料の収集と香港校への訪問調査とインタビュー調査を実施する。特に、新しい科目である「グローバル・スタディズ」の実践の成果を検証する。小学部4年生から受け入れを行い13人が入学したが、個々の児童の学習状況の把握と同時に、取り組みの現状についても、聞き取りや授業参観などを通して把握する。蘇州日本人学校では、調査結果をもとに設定した指導計画の達成状況について資料等をもとに検証する。また、文部科学省や海外子女教育振興財団、東京学芸大学等で実施してきた派遣前の事前研修で当該学校に派遣される教員への事前の適切な情報提供のあり方についても検討する。 最終的にはこの2つの学校での成果をもとに、グローバル人材育成に向けた日本人学校の教育モデルをシンガポール日本人学校の改革に活かす取り組みを行う。シンガポール日本人学校は、早くから「イマ―ジョン教育」を実践してきたが、これまでの取り組みの成果と課題を明らかにし、新しいグローバル人材育成という取り組みの基本的なコンセプトを明らかにし、学校関係者と共有する。このことを通して、グローバル化という状況に対応した日本人学校の新しい教育モデルを提言したい。
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Causes of Carryover |
平成27年度は、香港日本人学校、蘇州日本人学校への訪問調査を2回予定していたが、訪問先との日程調整ができず(修学旅行、全校保護者会等が当該の学校で企画された)、実際には1回しかできなかった。このため、当初計上していた国外の旅費の支出が執行できなかった。そのことが次年度使用額が生じた理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は、当初の香港日本人学校への訪問調査に加え、新しい教育モデルをシンガポール日本人学校で適用することを検討しており、シンガポール日本人学校への訪問調査の旅費にあてる。また、新しい日本人学校の教育モデルを提案するため、アジア地域以外の日本人学校を訪問する予定であり、現在、ニューヨーク、メルボルン日本人学校と交渉中であり、いずれかの学校の訪問調査のための旅費にあてる。
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