2014 Fiscal Year Research-status Report
就労支援者の生きられた労働と変革的組織化に関する教育・労働社会学的研究
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26381151
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
筒井 美紀 法政大学, キャリアデザイン学部, 教授 (70388023)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 共生共苦 / 処遇的発想 / 社会実験をとおした普遍性の探究 / 就労支援の徒弟的学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
国内の調査に関しては、数年間から知人として交流のあった就労支援者数人に、オーラル・ライフ・ヒストリーを展開中である。株式会社やNPOにて、行政からの委託を中心に、さまざまな就労支援事業の責任者として従事してきた方々である。だいたい2か月間隔で、前回聴き取りの反訳と新規質問項目を事前にお送りして実施している。 現在は、当該地域における少数のキーパーソンに対して続けているが、先方の職場において同僚や事業関係者を紹介されることが少なくない。キーパーソンが、日頃一緒に仕事をしている方々のネットワークが、どのような広がりを持っているのか、その見取り図を描きつつ、第二年度における聴き取り対象者の拡大を検討中である。 大学生の就労支援に関しては、労働教育NPOと協働し、12月にカンファレンスを実施した。高校生の就労支援については、「労働教育研究会(任意団体)」に参加し、さまざまな立場の関係者と、実践・研究に取り組んでいる。 アメリカの調査に関しては、NAWDP(National Association for Workforce Develpoment Professionals)の若者支援ワークショップ/カンファレンスに参加した(2014年9月)。就労支援者の当事者団体であるNAWDPは、①十全な相互作用が可能な75分というワークショップの時間枠、②よく練られ且つ「敷居の低い」評価シートの記入と提出、③参加者に対するアドヴォカシーの呼びかけ、という工夫を行なっていた。これらの点は、日本の就労支援関係者の団体が、大いに学べる点である。 またこのカンファレンスでは、NAWDPのコロラド州の責任者に、聴き取り調査を快諾して頂けた。第二年度の5月に、州やカウンティ・レベルにおけるアドヴォカシーの実態について伺う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国内の調査に関して。聴き取り対象者らは、2014年度の序盤に、仕事を中心としたライフコース上の大きな変動が生じるなど、その対応に忙殺されたため、実際の、面と向かい合っての聴き取りは、年度の中盤から開始された。言わずもがなだが、社会調査は、相手の方があってこそのものなので、これはやむを得ない。その分、初年度の序盤は、関連文献の読み込みに注力することができた。 細かい点にまで気を配ってクリーニングした反訳データと、新たな質問項目とを、聴き取り日の3週間前までにお渡しすることで、聴き取り対象者は余裕を持った準備が可能になり、毎回の聴き取りは密度の濃いものとなっている。聴き取り対象者もまた、「自分がこれまでやってきたことを客観的に深く振り返ることができ、今後、どんなキャリアを歩んでいけばよいか、展望が開ける」と述べられる。 大学生と高校生の就労支援に関しては、実践中心の研究会に参加することで、多様な立場の就労支援関係者とのネットワークを広げているところである。 アメリカの調査に関しては、年に一度の訪問頻度で、少しずつではあれ確実に進めていくことが当初からの計画である。2014年度の9月には、NAWDPのワークショップにたくさん参加して、日米の就労支援の共通点と相違点に関して、「体感的に」仮説を設定することができた。また、興味深い取り組みを実施している自治体やNPOの方々と名刺交換をし、感触が良ければ訪問調査の柔らかい打診を行なった。 本格的な調査は第二年度・第三年度に実施するが、初年度についても、すでに筒井(2015)を刊行した。これは、第二年度の調査を着実に進めるための土台になっている。
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Strategy for Future Research Activity |
国内の調査に関して。2014年度に既に数回の聴き取りを実施した対象者については、引き続き2か月に1回くらいのペースで、聴き取りを進める。仕事を中心としたライフコース上の出来事(event)の話がまだメインである対象者もいれば、自身の就労支援「観」「理論」を深く掘り下げて語る段階に来ている対象者もいる。最終的には、比較という意味でも、聴き取り項目の「潰し込み」が必要だが、相手の方に気持ちよく話していただくことが最も大切なので、様子を見ながらじっくり進めていきたい。 また先述したように、聴き取り対象者の人的ネットワークの全体像が見えてきたので、より関係の近い方から、聴き取りをお願いして進めていきたい。それをとおして、就労支援者個人のライフヒストリーだけではなく、当該地域における就労支援の発展史を描けるようにしていきたい。 アメリカ調査に関して。2015年度は、5月にラスベガスで実施されるNAWDPの年次カンファレンス/ワークショップに参加し、興味深い事業を行なっている組織や自治体の関係者とのネットワークを広げる。現在最も注目しているのは、ワシントンD.C北部における、長期伴走型の若者支援に成功しているNPOである。 2015年5月は同時に、コロラド州のNAWDP責任者のオフィスを訪問し、州やカウンティにおける活動の現状と課題について聴き取りをする。とりわけ、WIAからWIOAへの法改正の影響について、詳しく伺いたい。
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