2015 Fiscal Year Research-status Report
就労支援者の生きられた労働と変革的組織化に関する教育・労働社会学的研究
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26381151
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
筒井 美紀 法政大学, キャリアデザイン学部, 教授 (70388023)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 「動く企画」の調整 / 社会運動性 / 社会労働運動 / 労働の道徳化 / 労働力開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の実施内容は(1)日本国内、(2)米国、に大別される。前者は(1-1)就労支援組織における組織力の拡充と次世代人材育成、(1-2)大阪府地域就労支援政策確立の前史、(1-3)就労支援が定着した社会がもつ「労働の道徳化」の問題性、の3つ、後者は米国における就労支援者の全国組織であるNAWDP、日米比較から得られる示唆、である。 (1-1)自治体委託事業に大きく依存することの多い就労支援組織が、如何に組織力を拡充し、次世代を担える若手人材を養成しようとしているのか。外部からは見えにくい委託事業の応募と執行の実態を、一組織を事例に延べ12人の聴き取りから明らかにした。その成果は「『動く企画』の調整」「社会運動性」をキーワードに、『日本労働研究雑誌』2016年5月号の特集論文の1つとして産出される。 (1-2)2000年代半ばに、固有の地域就労支援政策を確立した大阪府について、それが可能になった原因を、1980~90年代の社会的文脈に求め、複数人のキーパースンへのオーラルヒストリーと、さまざまな年史や当時の社会労働運動資料の参照をとおして明らかにした。その成果については近々に発表する予定である。 (1-3)就労支援が定着した社会には、「労働の道徳化」を加速する問題がある。これを含めて論じた単著を近々に刊行する運びである。 (2)については、2015年春実施のNAWDPカンファレンスへの出席と同コロラド州ディレクターへの聴き取りをとおして、同NPOの次世代育成プログラム(NEP)の取組みと、全国-州-地域レベルの活動の相互関係を明らかにした。成果については、法政大学キャリアデザイン学会の2015年度学会誌に2本、掲載した。また、就労支援の日米比較をしつつ、「労働力開発」をキーワードに日本における就労支援の方向性について論じた論文を、分担執筆のかたちで近々刊行する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の方法的特徴は、聴き取り(オーラル・ヒストリー)の比重が大きいことであり、それは取りも直さず、聴き取り対象者がどれだけお話しくださるかにかかっているということである。幸いにも、三度四度といった繰り返し聴き取りにもお付き合いくださっており、またその際、話を伺うとよい人や、調べるとよい一次資料について助言をくださっている。思いもよらなかったタイミングで、謎であったことが明らかになったり、新たな仮説を生成したりするのに役に立ったりしている。 以上のような聴き取り対象者のご協力を得て、【研究実績の概要】に述べたように、この二年度で複数の成果物を産出することができた。それゆれ、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、課題は2つある。今後の研究は、これら2つを踏まえて推進していく。 第1に、新たな仮説が生成され、それを深めようとすると、仕掛かり中の作業を中断せざるを得ない場合が少なくなく、頻繁に再調整をしながら進めてきたことである。そのため、2015年度中に第一回を計画していた聴き取りの幾つかが、未実行となっている。最終年度である2016年度の早期に、その第一回を実行し、トータルでみた場合に遅滞の無きよう進捗させたい。 第2に、既に終えた聴き取りから拾い出せるテーマのうち、論文化していないものがいくつかある。これについても、実査の忙しさにかまけず、反訳の読み直しなどを丹念に行なって、成果を産出したい。
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Research Products
(3 results)