2014 Fiscal Year Research-status Report
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26381158
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
出羽 孝行 龍谷大学, 文学部, 准教授 (20454530)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 国際情報交流 / 大韓民国 / 京畿道 / 学生人権条例 / 教育革新 / 学校文化 / 人権教育 / 教育自治 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度においては、研究代表者は全期間にわたり東国大学校師範学部客員教授として大韓民国に滞在し、以下のような調査研究を進めた。 まず、韓国における学校暴力(いじめなどをはじめとする児童生徒による学校内での暴力全般)に関する資料や校則関連資料などを収集した。2つ目には京畿道学生人権条例(以下、条例)の定着を進める教師達による研究会の活動に参画した。具体的には同研究会が主催する現職教員のための研修会や研究会会員の活動であるセミナーや例会に参加し、条例定着のための活動とその効果について考察した。その過程で、同研究会所属教師や同研究会が主催する教員研修に参加した教師達に対し、条例制定後の学校の変化や問題点などについてインタビューを行った。3つ目には京畿道内の学校に通う生徒達にインタビューを行い、生徒から見た児童生徒の人権状況について調査を行った。4つ目には学生人権擁護官にインタビューを行い、条例違反を是正し、積極的に児童生徒の人権を擁護していくために必要な施策や課題について調査した。 そして、直接条例には関係しないが、韓国の教育の特徴を把握するため、以下の活動を行った。1つは韓国教育開発院(KEDI)が実施する指導要録の国際比較研究に共同研究者の一人として参画し、韓国における児童生徒の評価方法やその活用方策について把握した。2つ目は各種学会や民間教育機関などが主催する教育関連セミナーに参加し、今日の韓国の教育の問題点、課題等についての理解を深めた。 これらの活動で得た情報を活用して来年度以降に学術論文を執筆して行く予定である。今年度においては過年度より進めてきた、児童生徒の人権と自身の職業満足度との間で苦悩する教師達の姿について研究し、論文を作成した(当該年度は未公表、公表方法未定。来年度、公表予定)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年度内に学術論文の公表は行えなかったものの、現代韓国の教育状況を知るための研究活動で得た成果は韓国教育開発印(KEDI)の報告書に記載したり、日本国内の教育雑誌に原稿を掲載したりした。 また、韓国への長期滞在という利点を活かし、インタビュー調査などを通じて来年度以降実施する研究の基礎資料を収集することができた。調査の詳しい分析は来年度になり、その意味では来年度以降、研究発表を連続して行っていく必要があるが、今年度得たデータは短期の現地滞在では難しい中長期的な調査を通じて得たものであり、その意味で国外研究員として韓国に丸1年滞在した利点を最大限活かすことができたと考える。 但し、今年度予定していた調査のうち、校長や教頭をはじめとした管理職教員へ京畿道学生人権条例に対する認識を探るための調査を実施できなかったなどの課題は存在する。 全体として予定していた調査研究のみならず、次年度予定のものも実施したということとあわせ、来年度以降継続して研究を行っていくために必要なデータや視点を獲得できたという意味において、上記のような「達成度」を選択したのは妥当であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は当該年度実施した調査を分析して論文としてその成果を積極的に社会に発信していく予定である。また、当該年度の調査活動を通じて京畿道教育庁が実施する教員研修システムについても詳しく分析する必要を認識した。この研修は教育庁の支援の下、教師達自身で組織された研究会が教員研修プログラムを開発し、実際の研修を実施するものであり、NTTP研修と呼ばれるものである。いわゆる行政主導の研修プログラムと比較して教師自身が自身の課題に基づき設定したプログラムを運営し他の教師の資質向上に資するという、これまでにない研修制度は日本でも参考になる部分が多いと思われる。 こうした研究課題は本科研研究の目的である京畿道学生人権条例の制定と定着にも密接に関連しており、本科研の研究目的にも合致すると考える。 また、児童生徒人権条例は韓国の学校文化をより民主的なものに変革していこうとする、金相坤前京畿道教育監の政策の一つであるが、同様の理念の下、革新学校の推進も行われている。このような教師自身が主体性をもって学校をより民主的なものに変えていこうとする取り組みは児童生徒の人権保障と一体のものとしてみていく必要があり、次年度以降の研究の推進方策にも大いに取り入れていく必要があると思われる。 研究主題自体を必要以上に大きく広げることは慎重であるべきであるが、上で述べた視点を有しながら、次年度以降も更に研究を進めていく予定である。
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