2014 Fiscal Year Research-status Report
イギリスのユニバーシティ・テクニカル・カレッジに関する比較教育学的研究
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26381162
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Research Institution | Nakamura Gakuen College |
Principal Investigator |
望田 研吾 中村学園大学, 教育学部, 教授 (70037050)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | イギリス / ユニバーシティ・テクニカル・カレッジ / 中等教育 / 技術教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度における研究は、以下のように実施した。 第1は、文献・資料の収集と分析である。ユニバーシティ・テクニカル・カレッジ(以下UTC)に関する政策文書、Baker Dearing Educational Trust(以下BDET)の文書、UTCに関する新聞等の記事を、主にインターネットにより収集し分析を行った。第2は、UTC等の訪問調査の実施である。今年度は2014年11月に12日間及び2015年3月に12日間の調査を実施した。11月調査の対象は、2013年に設立されたUTC7校、3月調査の対象は、2013年設立のUTC1校、2014年設立のUTC2校、BDETである。今年度の調査において明らかになった主な点は以下の通りである。 1. 訪問したUTCの多くにおいて、14歳というUTCの入学年齢がネックとなって入学者の確保に苦慮している状況が見られた。入学定員100名に対して入学者は4名のみというUTCもあった。2.UTCと地域の中等学校との関係は良好であるとはいえず、あるUTCの校長は「彼らは私たちを憎んでいる」と述べたほどであり、他の中等学校はUTCを生徒を奪う「脅威」として見なしているようであった。3.UTCの教育実践については、企業等との連携の強化により最新の設備を導入した「雇用可能性」を強調した実践が行われており、特にエンジニアリングに関心がある生徒を惹きつけている状況が見られた。4.UTCはイギリスのスキル不足解消にとって有効な方策として、産業界からの強い期待がかけられており、保守党、労働党両党ともUTC推進の方針をとっており、将来的には拡大していくことが予想される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書に記載された研究目的は以下の通りである。「本研究は、イギリスの保守党・自由民主党連立政権による中等学校制度改革の中核に位置するUTCを対象として、UTC設立の背景と経緯、UTC設立と運営における大学の関与の実態、UTCの目的と教育実践、UTCに対する教員組合、大学団体等の態度に焦点を当てつつ、UTCの実相を解明することを通じて、中等教育段階の技術教育に対する大学の関与が、イギリスにおいて長く軽視されてきた技術教育の地位向上にとってどのような有効性を持つのか、また、従来のイギリスの中等学校とは異なる特徴を有するUTCが、イギリスの中等学校制度にどのようなインパクトを与えるのか等について、現地調査を中心とする方法によって、比較教育学的視点から明らかにすることを目的とする。」 この研究目的達成のための研究計画の第1は、関連文献・資料の収集と分析であるが、UTCに関連する資料についてはインターネットにより、またBDET訪問等によって収集した。第2に研究計画の中心となるの現地訪問調査であるが、平成26年度には計画通り2回の訪問調査を実施した。第1回調査では2013年9月設立のUTC7校を訪問し、設立の経緯と背景、教育実践の実態等について把握することができた。第2回調査では、2014年9月設立のUTCを含めて3校に加えてUTCのスポンサーである大学1校を訪問するとともに、BDETを訪問し、大学側の態度、過去2年間のUTCをめぐる動向等について把握することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度における研究計画については、以下のように実施を計画している。 1.前年度に引き続き、UTC関連の文献・資料を収集・分析する。 2. 第3回訪問調査(2015年11月予定):2014年9月に設立されたUTC3校程度、UTCに関与している大学等、教員団体等を訪問し、校長、関係者、団体代表等に対してインタビューを行うとともに関連資料を収集する。 3.第4回訪問調査(2016年3月予定):第3回調査と同様にUTC、大学等、さらにUTCをサポートしている企業等を訪問し、校長、関係者等に対してインタビューを行うとともに、関連資料を収集する。 平成28年度には、第5回訪問調査を実施し、文献・資料による分析ならびに5回の訪問調査の結果に基づき総合的考察を行う。
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Causes of Carryover |
平成26年度第2回調査を平成27年3月16日から27日までの期間に実施したが、調査実施前に現在の円安状況等の理由により現地での交通費等の経費がかなりかかることが見込まれたため、平成27年度経費から10万円を前倒しで請求した。この第2回調査における現地調査交通費は41,722円であり、次年度使用額49,391円のうち既に41,722円が支出されている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
残高49,391円から既支出額41,722円を差し引いた残額7,669円については、27年度旅費等に充当する予定である。
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Research Products
(1 results)