2014 Fiscal Year Research-status Report
小学校におけるアート空間に関する研究―材料・場所・空間の問題を中心として―
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26381170
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
蝦名 敦子 弘前大学, 教育学部, 教授 (20302010)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | アート空間 / 造形遊び / 材料 / 場所 / 地域 / 小学校 / 空間把握 |
Outline of Annual Research Achievements |
材料に注目し教室での実践から:弘前大学教育学部附属小学校2年生と3年生を対象に行われた立体題材を取り上げ、どちらも充実した授業が行われた要因について、素材との関わりから比較考察した。立体題材においても小学校低・中学年では材料からの影響が大きく、教師の適正な素材の選択と、その与え方―仕掛けや工夫が重要である。素材を教材として作り変える、教師の教材化の力量が問われており、とりわけ素材に対する提示の仕方が、児童の表現の活性化の鍵になる。本内容は「素材に基づく子どもの表現―二つの立体題材の比較考察から―」にまとめられ「美術教育研究」第47号(大学美術教育学研究会、2015.3)に論文が掲載。 学校外の地域との関連から:2011、2012、2014年と3回実践されてきたねぷた灯籠製作をめぐり、相互に比較しながら、2014年度の題材の問題点と意義について考察。子どもの造形能力が既習内容を基に展開され、地域文化を学校教材に関連づけることが、潜在的な児童の造形能力を十二分に発揮させる点で意義深いことが実証された。「地域の祭りと図画工作教材化の課題―ねぷた灯籠製作の実践を通して―」「芸術文化」第19号(東北芸術文化学会、2014.10)に掲載。 アート空間(パティオ)での実践から:造形遊びを通して中学年のアート空間把握について考察。中学年になると一段と広がりが見られ、周囲の壁にも意識が及ぶ。しかし、発想した形を作ろうとするグループと空間全体を装飾(構成)しようとするグループが混在して現れ、現行学習指導要領の内容が確認された。児童の造形行為を踏まえて連携をいかにとらせるか、が造形遊びの指導上の課題である。その手掛かりとして①目的の共有化、②話合いの場の設定、③教材(題材構成)の工夫、を課題として抽出した。この内容は、第37回美術科教育学会新潟大会(上越教育大学、2015.3)で口頭発表された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
造形遊びの授業実践については、予定の低学年ではなく、中学年(4年生)の造形遊びの実践となったが、材料に関して低学年(2年生)の教室での活動について検討することができた。平成27年度に予定していた中学年の造形遊びを、平成26年度に直接題材考案から授業実践まで筆者が行うことができ、それにより今後行う予定の高学年の造形遊びについて予め問題点を抽出することが可能となった。また、6年生の実施した灯籠製作を通して、これまで2011年から3回実施された灯籠製作を振り返ることができた。このことは同6年生が4年生の時にも体験していることから、既習内容との関連で児童の成長を含めて造形活動の展開について比較考察をすることを可能にしている。4年生で製作したものよりさらに大型化し、それを祭りにも参加して披露したが、学校での製作や鑑賞、さらに地域で他者に見せながら鑑賞し合う学校外の活動として展開し、一層大きな空間へと広がっている。その考察については継続中である。
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Strategy for Future Research Activity |
授業実践の学年は、臨機応変に対応したいと考えているが、平成27年度は前倒しに高学年の造形遊びを実践する予定である。その実践を通して高学年のアート空間把握について検討する。また、灯籠製作については、題材としては終了しているが、さらに鑑賞について展示を含めた新たな展開を予定している。子どもの製作した作品を使って展覧会を企画し、これまでの表現の題材名から新たな題材名「灯籠で描くわたしたちの弘前」展を開催する。弘前ねぷた祭り期間中に、子どもの灯籠作品で弘前の町全体を表現しようとする。さらに1年生の授業実践も予定されているので、材料、場所、空間の視点から考察する予定である。
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Causes of Carryover |
一年目の実践の結果をすぐにCD-ROMやビデオ資料にまとめるところまではいかなかった。これからさらにそのための人件費や謝金が必要になる予定である。また二年目の経費と勘案しながら、これから必要になる諸経費について、全体的に配慮したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年度と同様に授業実践をさらに他の学年で実践する予定である。その研究授業のための補助費や、研究成果発表のための調査・研究旅費、研究成果投稿料に使用される。今年度は特に映像資料を研究の一部として作成したり、研究の一環として児童作品の展覧会などを企画しているので、そのための人件費・謝金にあてがわれる予定である。
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Research Products
(6 results)